ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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14年ぶり、そして初めての雪の涸沢: 涸沢岳・北穂高岳その4  

2017年4月29日(土)~5月4日(木) 長野県松本市 涸沢岳(標高3110m)・北穂高岳(標高3106m) 


5月2日(火) 奥穂高岳編 
夜が明けました。同室の宿泊者がまだ寝ていた相方にご来光が見えるよと起こしに来た声で目が覚めました。4時にセットしていた腕時計のアラームはまったく効果がなかったようで、すっかり寝過ごしてしまいました。昨夜吹き荒れていた吹雪は、静かになっています。以下の写真はクリックで拡大できます。


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急いでダウンジャケットとダウンパンツを着て、カメラをもって外に出てみると、まぶしい太陽が周囲の山々を照らし出していました。奥穂高岳がすっきりと青空にそびえています。


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奥穂高岳の左奥には前穂高岳。


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前穂高岳のクローズアップ。


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こちらは笠ヶ岳。昨日はガスに隠れて姿が見えませんでしたが、今日はすっきり。こちらもまだ登ったことがないので、近いうちに訪れてみたい山です。


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笠ヶ岳の背後には、白山も見えています。


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北穂高岳も見えています。


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涸沢岳と北穂高岳。


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常念岳の後ろから登った太陽は、すでに正視できないまぶしさです。


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涸沢カールの奥底には、まだ朝の光が届いていません。


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風はおさまったとはいえ、時折雪煙を舞い上げるほどの風が白出のコルを通り抜けていきます。雪煙が舞う瞬間を待って何度もシャッターを切りました。クリックで写真が拡大するのはここまでです。



ここで一息。ぽちっと押して休憩したら続きをどうぞ。




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眼前にそびえる奥穂高岳。今日はこの岩壁に挑みます。


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朝食の時間が近いづいてきたので部屋に戻り、パッキングをしていると朝食の時間になりました。食堂は2階の廊下奥から下りて行きます。昨晩と同じ人数の席が用意されているので、朝食なしで早出したひとはいないようです。GWというのに、宿泊者はわずか10名。読み通り、前半は平日が2日あるためガラガラでした。


食事を終えて部屋に戻り、パッキングを終えて外に出ました。担いできた大きなバックパックは小屋の廊下に置かせてもらい、アタック用の小型パックにカメラや水、行動食など必要なものだけを入れてきました。


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奥穂高岳は無雪期にも登ったことはなく、これがまったくもって初めての挑戦です。白出のコルからの取り付き部分が一番難しいらしいということで、どこをどういう風に登って行けばいいのか、下からじっくりとルートを見定めます。青線のようなコースで登ったわけですが、実際とは少し違うかもしれません。赤線部分は鉄梯子です。この岩場の上に急傾斜の雪壁があるそうですが、ここからはその様子を見ることはできません。なので、岩場を抜けたらいきなりぶっつけ本番となります。


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岩場のすぐ下まで来ました。ここから取り付きます。この斜度と高さは剣岳のカニのタテバイを思い出します。斜度も難易度もカニのタテバイのほうが上だと思いますが、ここも決してお気楽に登れるほどやさしくはありませんでした。なんといっても、カニのタテバイのような補助となる鉄杭や鎖はほぼありません。途中に鉄梯子が2か所と、2か所ぐらいワイヤーや鎖が張られているだけです。それに、雪と氷が絡んでくるわけですから、緊張感はカニのタテバイよりも強かったかもしれません。


途中、狭いテラスのような岩の上を横に移動する場所で、その岩の上にべったりと氷が張り付いていました。上の鉄梯子を登りきったところだったように記憶していますが、定かではありません。万一滑って落ちてはたまらないので、アックスで氷を叩き割って足場を確保しようとしたのですが、力を入れてアックスを振り下ろしてピックをたたきつけてもまったく歯が立ちません。ピックの切っ先は突き刺さることさえできずにはじかれました。このとき、やばいかもしれないという漠然とした不安を感じてしまいました。安全を確保するためにやろうとしたことができないということで、かなり焦ったのだと思います。しょうがないので、岩の角にピックをひっかけて確保し、慎重に右足を氷の上に載せて滑らないことを確認して、体を移動させて氷の上を渡ったのでした。


そのあとは、さらに狭い足場の岩を回り込んで雪壁に出てすぐ上の岩に戻るのですが、この雪壁がなかなかしびれる斜度でした。朝早い上に吹雪の後なので先行者の足跡がわずかに残っていただけでした。雪も比較的硬く、つま先をけりこんでもつま先をねじ込めるほどのステップを作ることはできなくて、ほぼ前爪だけで登るような状態です。こうなると、昨日クランポンに不安を感じたことを思い出してしまい、さっきの氷のところで感じた不安感との相乗効果でますます気持ちは焦ります。


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なんとか岩に乗り移り、岩場のほぼ一番上までやってきました。そして、すぐ上にある雪壁を見上げた瞬間、この先は行ってはいけないと感じました。それが弱気ゆえのものなのか、なにか予感するものがあったのかはわかりません。目に飛び込んできた雪壁は、いままで見たこともない急傾斜の雪壁でした。ほぼ垂直にしか見えないこの雪壁をまったく確保なしにフリーで登るなんて、考えただけでぞっとします。先行者は右手にアックス、左手にも何かをもっていて、両手両足を使って登っていますが、僕はアックス1本だけです。ダブルアックスなら常に三点支持を確保しながら登ることができますが、アックス1本ではアックスを差し替えるときに2点支持になってしまいます。いまいち信用できかねるクランポンの前爪だけで、おそらく50度を越えているであろう雪壁の途中で一瞬でも立たなければいけないというのは、さすがに躊躇してしまいます。


先行者が何度もつま先を蹴り込みなおしたり、アックスを刺しなおしたりしながら、なんとも危うげな動作で少しづつ登って行くのを見ていると、こちらまでドキドキしてきます。最初のインパクトが大きすぎて動揺しているということもあるでしょうから、とりあえず一度座って気持ちを落ち着かせることにしました。さいわい、今いる場所は荷物を降ろして座ることができるくらいのスペースがあります。後続の登山者もいないので、しばらくはゆっくりすることができるでしょう。


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腰を下ろすと、正面に涸沢岳があり、右手奥に北穂高岳が見えていました。


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笠ヶ岳もまぶしく輝いています。この写真の左下に、いま登ろうとしている雪壁の下部が写っていますが、そこにネットが張ってあるのがわかります。これがないと万一滑落した場合、そのまま白出沢に落ちて、何百メートルも落ちてしまうということですが、それほど危険な場所ということでもあるわけです。ただ、このネットで絶対止まるのかどうかは、落ちてみないことにはわからないのです。


風景を眺めながら、安全に登って降りてこられるかどうか、いろいろと考えました。しかし、どう考えても何の保証もないことにかわりはありません。経験したことのない急傾斜の雪壁をフリーで登るというリスク、途中三点支持ができなくなる1本アックス、性能に一抹の不安を残すクランポン、ステップのない真っ新に近い雪壁、戻ってくる頃には逆に柔らかくなって足場が不安定になりそうな雪の状態など、不安要因がたくさんあり過ぎる一方で、安心できる材料といえば天候が崩れる心配はなさそうというぐらいしかありません。


再び雪壁を見上げてみましたが、行けそうだという気持ちはまったく湧いてきません。数分経ってもまだ姿の見えている先行者の様子からしても、一筋縄ではいかないだろう場所であることは明らかです。下山しよう。これ以上行けば、戻れなくなるかもしれない。今の自分の技量でこの壁にとりつくのは、無謀な行動だと判断しました。経験をつんで安心できる装備を揃えたうえで、この壁に恐怖を感じなくなる時に再び挑戦すればいいことです。それよりも、まずは無雪期に一度登ってコースの状況を確認しておいたほうがよさそうです。ということで、初めての奥穂高岳登山は撤退という結果になりました。

つづく。


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| 2017年4月 涸沢岳・北穂高岳 | 22:22 | comments:3 | trackbacks(-) | TOP↑

COMMENT

なるほど…丁寧なアドバイスありがとうございます!

素人の癖にしんどいめの行程を組んでしまうのが何よりの原因という根本的な問題もある気がします・・・きれい景色が見たいので標高の高いところに行きたい→冬は林道が低い位置で閉まってる→高低差大きくなる→スノーシューなのにどうして普段の高低差よりたくさん歩く?・・などです💦

明日もどこかに行こうと思ってるんですがわざと重たいものを持って行こうかな・・ワインボトルとグラスとか?違うか・・・
お気をつけて、これからもきれいな写真をお願いします(#^^#)

| みよん | 2017/05/21 05:27 | URL |

Re: タイトルなし

みよんさん

コメントありがとうございます。

今回は一番の目標だった奥穂高岳には登れませんでしたが、無理をして怪我をしたり遭難しては本末転倒だし、単独行なので臆病なぐらいでちょうどいいと思っています。いずれまた挑戦してみたいと思います。

雪山に実際に行くと疲れるというのは、クランポンやアックスなど装備が増えることが原因かと思います。やはり、無雪期に山行回数を増やしたり、時々重装備で登ってみたりして重い荷物に慣れて体力をつけることが必要です。また、シーズン初めにできるだけ雪山に入り、雪慣れしておくことも大切かと思います。 寒さ慣れするだけでも疲れ方は違いますよ。

疲労対策としては、ハイドレーションにアミノ酸ドリンクを入れておき、こまめに摂取するようにすると水だけを飲む場合に比べて疲れにくくなりますよ。欧州で手に入るかどうかわかりませんが、僕は味の素のアミノバイタルを利用してます。ただし、冬は冷えすぎたり凍ったりするので、ハイドレーションではなく、少し温めてポットに入れておいたほうがいいです。

| ヤマふぉと | 2017/05/20 21:02 | URL |

これは完全にアルピニスムの範疇の登山ですね。憧れるけどまだ試したことのない世界です。読んでいてドキドキしました。無事に下りられてホッとしました。無理をすることが一番かっこいいわけではありませんし、危ないところに登った先でいい写真が撮れるとも限りませんし・・・センスの方が大事だと思います!!
今回もきれいな雪山の写真、ありがとうございました。雪のあるところは人の写真を見ていると羨ましくなるものの、実際に行くと疲れてイヤになります💦

| みよん | 2017/05/20 08:22 | URL |















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