ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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剱岳~試練と憧れの山 その4

2014年8月11日~14日 富山県立山町 剱岳 単独テント泊 


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カニのたてばいのすぐ下までやってきました。少し余裕のある広さがあったので、核心部にとりかかかるまえに小休止をして行動食を食べようかと思いましたが、崖のすぐ下ということで、うかつに休憩していたら落石の餌食になりかねません。それに、後続の年配の夫婦に先を譲って万一渋滞してしまうと困ります。ということで、多少の疲労感と空腹感を抱えたまま、カニのたてばいに突っ込むことにしました。


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カニのたてばいは、目に見えている鎖のかかっている前半部分は高さ約20mぐらいで、そこを登りきるとちょっとしたテラス状の場所に出て横方向にトラバースします。トラバースして岩を乗り越えると再び急傾斜の岩壁を登りますが、この後半部分は前半部分ほどの斜度はなく、手がかり足がかりもあるので、難易度は前半部分よりもはるかにやさしいといえます。要するに、前半部分だけが核心部のようなもの。とにもかくにも、鎖を頼りに登ります。とはいえ、あまり鎖に頼って腕に力を入れすぎると、腕があがって握ることができなくなりますから、鎖場を登るときは基本的には足で登ることが大切。腕はあくまでも補助です。


カニたて01

カニたて02
登りはじめから前半部分が終わるところまでヘルメットに取り付けた小型ビデオカメラで動画を撮りましたが、登るのに夢中になってしまいカメラのことにまで気が回らなかったようです。動画を見てみると、上下左右に動きが激しすぎて見ていて気分が悪くなりかけたので、公開するのはやめます。とりあえず、前半部分を登りきったところで振り返ったところを静止画にしておきます。高度感はなんとなくわかるかと思います。なお、前半部分を登りきってテラスに立つまでに要した時間は約3分半でした。石鎚山の二の鎖のほうが距離も時間も上手のようにも感じます。難易度から言えば剱岳のほうが難しいのですが、石鎚山の鎖が登れれば、カニのたてばいも大丈夫ではないかと感じます。


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カニのたてばいを上りきると、下山ルートであるカニのよこばいの入り口がすぐ近くに見えます。こちらもかなりのスリルを味わえそうです。そして、左手奥にある白いL字型の踏み跡がついている岩峰が平蔵の頭です。このL字型の部分を下から上へと登るのが下山コースです。上りのコースは、L字型の左側にある縦一直線の踏み跡。岩峰の向こう側から乗越してきて、まっすぐに下るわけですが、こうしてみるとなかなかどうして恐ろしげなルートです。


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カニのたてばいを登りきってからも、けっこう傾斜のきつい岩だらけの稜線が続きます。しかし、そこを抜けると傾斜は緩くなり、岩ゴロながらも道幅のある斜面をジグザグに登るルートになるので、あとは山頂まで歩き切れればOK。


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ようやく山頂が見えました。ここからは、もう1分もかからないでしょう。


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8:56 憧れの剱岳に登頂することができました。6時過ぎにテント場を出発して、3時間を少し切るタイムですから、ほぼコースタイムで登ることができました。荷物が軽いということは、やはりメリットが大きいです。山頂にはそこそこ人がいて、ひっきりなしに祠の前で記念撮影がされているので、なかなか撮影するタイミングが取れません。なんとか、人の流れが切れた瞬間を狙って祠だけ撮影。


とりあえず、どこかに座ってゆっくりと景色でも眺めようと見晴らしのよさそうな場所へと歩き出した直後、いきなり大粒の雨が落ちてきました。前剱のあたりから、ときどきぽつぽつと降ったり止んだりしていたのですが、ここに来てまさかの本降りに見舞われてしまいました。岩陰に隠れるようにしゃがみこんでみたものの、ほとんど雨よけの効果はありません。昨日のように土砂降りになったら、カニのよこばいの通過が面倒なことになりそうです。それに、ぺらぺらの生地のバーサライトジャケットがレインウェアとしてどれほどの性能があるのか、やや不安もあります。もしも期待にそぐわないもので、アンダーウェアが濡れるようなことになったら、この雨と風の中、吹きさらしの稜線で低体温症になりかねません。


ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。



9:00 僕は下山を即決しました。まだ山頂からの風景もろくに眺めていないうえに、休憩もとっていません。祠の写真を撮り、山頂を少しばかり歩いただけの状態ですが、この雨と風の中でのんびりと山頂の景色を楽しんでいられるほどの十分な装備はもっていないのですから、早く安全な場所まで下ることが最優先です。


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バチバチとジャケットをたたきつける雨音を聞きながら、急ぎ足で下山を始め、カニのよこばい入口まで戻ってきました。雨は幾分小降りになっていましたが、風は相変わらず吹き付けてきます。雨で濡れたグローブが風にあたると手の甲から体温が一気に失われる感じです。このままカニのよこばいに入ってもいいものかと一瞬躊躇しましたが、素手で冷たい鎖や岩をつかむと余計に体温を奪われそうだし、このグローブは登山用ではなく作業用ですが、手のひら側に使っている人工皮革素材の滑り止め性能がかなりよいので、グローブをはめたまま行くことにしました。


カニよこ01
前を行く年配の夫婦がカニのよこばい部分に入っていくのを見届けてから、自分も核心部分に進みます。


カニよこ02
最初は急傾斜の岩壁をまっすぐに降りていきますが、この部分はたいして問題はありません。


カニよこ03
まっすぐに下りきって、鎖が岩を回り込むところから先が、いわゆる「よこばい」になる部分です。ここの最初の一歩が難しいらしいのですが、 落ち着いて上から覗き込めば、60cmぐらい下に岩溝が横に入っていて、そこが足場になることがわかります。右足からいくか左足からいくかの問題ですが、足を下ろしてから左方向に進んでいくことを考えれば、右足で降りて、左足を横に出したほうが動きとしてはスムースです。


カニよこ05
岩壁を真横にトラバースする部分はわずか10mもないぐらいだったと思われます。このトラバース部分でけっこう風に吹かれたため、手のひらの感覚がなくなりかけるほど手の体温を持っていかれてしまいました。ちょっとやばいなあと思いながらも、そんな場所ではどうすることもできません。そこから一段下って、さらに斜め下に岩を巻いていくと今度は鉄梯子が現れます。


この鉄梯子をちょうどガイドツアーらしい団体が下っていて、なんとご丁寧にガイドらしき男性がいちいちロープを出しているではありませんか。もちろん、前を行く年配のご夫婦ともども彼らが降りるのを待たされます。まあ、安全のためにいたしかたないところですが、そもそも鉄梯子を降りるのにロープが必要なレベルの登山者で剱岳にツアー登山するということが間違っているように思うのですが、どうなんでしょうねえ。


ガイドがついていても遭難事故は起こります。肝心なのは、自分の実力に見合わない山に無理して登らないこと。経験をつんでから自分の力で登ればいいのであって、何もあせってガイド頼みの登山をする必要はないと思うのですが、百名山ブームに乗ってどうしても登りたい人が多いのかもしれません。


じっとしていてもしょうがないので、岩の窪みを利用して、濡れて冷えてしまったグローブを防水グローブに取り替えました。こんなときのためにと持ってきて正解でした。この防水グローブ(セイラス エキストリームグローブ)は、このあと完全に雨を遮断してくれて、なおかつ保温力も発揮してくれて助かりました。


手袋を取り替えていると、上から「ラークッ!」という叫び声。僕の後にいたカニのよこばいを一段下がった狭い場所で渋滞していた男性が石を落としたらしいのですが、ほんと勘弁してほしいものです。幸い、位置的にこちらに直接転がってくるようなことはありませんでしたが、カニのたてばいの上り口で待っている人たちが下方に見える場所です。あそこまで転がっていたら大変です。


夏山一般登山道の恐ろしいところは、うかつに落石を発生させてしまうような人と一緒に登らざるを得ないという恐ろしさです。2011年の穂高のザイテングラートで起こった落石事故で小学生と祖父の二人がなくなった痛ましい事故はまだ記憶に新しいところですが、登山ブームが続く限り、このような事故は繰り返されのでしょうか。登山者ひとりひとりが自覚を持って慎重に行動してもらいたいものです。


さて、ロープを出していた団体がようやく鉄梯子を通過して、年配のご夫婦が後に続きます。まずご主人が下り始めましたが、すぐに奥様が続こうとしたので、思わずおせっかいをしてしまいました。
「まだですよ。前の人が下りきってからでないと、もしもあなたが転落したら下の人を巻き込みますよ。」
余計なことだとは思いましたが、目の前で多重遭難事故なんか見たくないですから。奥様も素直にそうですねと理解してくれました。そして、奥様が梯子を下りようとこわごわ足を出しているとき、なんだか足を引掛けて落ちそうな雰囲気だったので、再びおせっかい。バックパックのショルダーベルトの付け根を後からつかんで、
「持ってますから、大丈夫です。足を引掛けないように気をつけて。」



鉄梯子を下りるとさらに鎖場があり、そこを通過するとトイレのある鞍部のような場所にでました。ロープを出していた団体は7名ぐらいいたでしょうか。トイレの前で集合していた団体の横を通過し始めたときに彼らも動き始めたため、なぜか団体の真ん中を歩くはめになってしまい、ちょっと戸惑います。さいわい、ガイドがすぐに気がついて、少し歩いたところで先に行かせてくれたので助かりました。


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次に現れたのが平蔵の頭にある12番目の鎖場。ここも、カニのよこばいに次ぐ下りの難所のひとつです。垂直に近い角度の岩壁をまっすぐ登ったら、途中で真横にトラバースし、再びまっすぐ登って、反対側に下るという場所です。風雨の下で通過するのは、なかなか大変です。尾根を乗越して反対側に回ると、風が強く吹きつけてきて雨粒が痛いぐらいの強さで顔にあたるうえに寒さも増してきます。ゆっくりと写真を撮る余裕もなく、スリップに注意しながらひたすら下ります。


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平蔵の頭からは少し平坦な尾根を下りますが、その後13番目の鎖場「前剱の門」が現れます。これまた結構な傾斜の岩壁ですが、ここは手がかり足がかりがしっかりしているので、それほど厄介ではありません。事実上、ここが最後の難所といってもいいでしょう。


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前剱の門を通過すると、ほどなく前剱ですが、下りルートは上りルートの下の斜面をトラバースするようについています。前剱のピークをすこし過ぎたあたりで上りルート合流し、あとは同じルートを下るだけです。雨脚は弱まったり強まったりを繰り返していますが、ルートが尾根の東側になったおかげで、西風がさえぎられて風はあまり強くなくなりました。


10:51 一服剱ですこし休憩をとりましたが、さすがにほとんどノンストップに近い状態で剱岳山頂を往復してきたためか、足腰にかなりの疲労感を感じます。こういうときは思っているよりも足が上がらずに躓きやすいので、下りのルートでは注意が必要です。


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11:16 ようやく剣山荘まで下りてきました。すこし雨脚が強まってきたので、剣山荘で雨宿りがてらコーヒーを飲むことにしました。きれいな食堂でゆっくりとコーヒーを飲んでいる間に雨が上がったので、キャンプ場へと向かいました。


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12:07 テントに戻ってほっと一息です。剣山荘からは雨に降られることがなかったので、レインウェアも乾いてくれて助かりました。すこし防水性能が心配だったバーサライトジャケットですが、無駄な心配でした。防水性能に関してはまったく問題なく、剱岳山頂付近の強い風雨でも完璧に水の浸入を防いでくれました。また、わきの後ろにあるベンチレーションが効いたのか、下山してきても蒸れ感を感じることもなく快適でした。


ボトムスのベルグテックSLハードシェルパンツも、レインウェアとしての機能は必要十分なものでした。タイツなしで直接履いていたので若干蒸れ感を感じたこともありましたが、大きなベンチレーションを開けばあっという間に蒸れ感はなくなります。レインウェアのパンツを脱いだり履いたりするために立ち止まる必要がないのは、とっても便利でした。通常の登山パンツとしても申し分なく、ミズノにしては悪くないコンセプトのパンツです。







昼食をとった後、濡れたままだったストームクルーザージャケットをテントの上に広げて干したり、雨にあたってしまったアタック用のバックパックや、グローブ類も砂利の上に広げて天日干しです。それにしてもストームクルーザージャケットは、山行前に手洗いして、ドライヤーの熱でしっかりと撥水性能の回復を図り、なおかつ防水スプレーまでかけてきたというのに、わずか1日の土砂降り雨で撥水性能はすっかりなくなって、べったりと生地が水を吸い込んだようになっていました。10年が経っていることを考えれば、もはや寿命なのかもしれません。


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その後、することもなくなったので、カメラを持ってキャンプ場周辺を撮影ポイントを探してぶらぶらと歩いてみました。時期的にお花畑はほぼ終わっていましたが、ところどこ花が残っているところがありました。


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天気が回復するのを待ちかねたかのように、ヘリコプターが荷物を運んできました。


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すこしづつ天気は良くなってきました。夕方になると青空と日差しが出てきて、すっかりいい天気です。午前中から晴れてくれれば最高だったのにと、ちょっと残念な気持ちがありますが、明日の好天に期待がもてそうです。


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17時を回るとときおり西からガスが流れてきましたが、剱岳を覆い隠すようなことはなく、気持ちのいい晴天は崩れることはありませんでした。

つづく。


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| 2014年8月 剱岳別山尾根 | 15:45 | comments(-) | trackbacks(-) | TOP↑

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