ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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厳冬期の南アルプスデビュー戦: 仙丈ケ岳その1

2012年12月31日~2013年1月2日 南アルプス仙丈ケ岳


こんな日が来ることを誰が予測できたでしょうか。そもそも、かつては積雪期に登山するなんて正気の沙汰ではないと思っていた人間です。それが何をとち狂ったのか、もっとも寒さが厳しい厳冬期に、ソロテント泊で3000m峰に登りに行こうというのですから、かつての自分なら頭おかしいんじゃないの? と一蹴していたことでしょう。


何はともあれ、行くと決めたのです。この日のために、装備もそろえました。厳冬期用の寝袋、クランポン、アックス、グローブ、シェルジャケットとパンツ、大型バックパック、その他こまごましたものまで含めると、軽く20万円近い金額になっているはず。もちろん、一気に買い揃えたわけではなく、かれこれ数年がかりの買い物です。


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GWの立山で予行演習をかねてテント泊し、雄山の縦走もしました。厳冬期の石鎚山や剣山への登山はもちろん、氷点下10度の地元1000m級の山への登山などそれなりの練習はしてきたものの、はたして厳冬期の南アルプスでその経験が通用するのか、こればかりはなんともいえません。とにもかくにも、装備はある。あとは経験のみ。とにかく、やばいと思ったら即撤退。がまんはしない。無理もしない。何かあってもあきらめない。そのことだけを固く心に誓って、戸台の登山口に立ったのでした。


85リットルのバックパックはパンパンに膨れ上がり、肩と腰にずしりとのしかかります。天気予報では、31日と1日は晴れ。しかし、寒波が来ているので寒さは厳しいとのこと。登山天気では、標高3000m付近は-14度などという数字も出ており、その上風速20m/秒! まともに立って歩けるのか?という疑問以前に、体感温度は-34度ってことか? はたしてこの装備で大丈夫なのかという疑問が心の片隅にどよ~んと淀んでいるのを感じながら、僕は歩き出しました。


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7:50 自宅で作ってきた登山届けを提出し、登山口の標識から一歩踏み出してみれば、そこはまさに荒野。はるか彼方の峰を目指して、長大な河原歩きが始まります。北沢駒仙小屋までは、夏道のコースタイムで5時間30分程度。雪道ということを考えて1時間余分を見たとしても、15時前には着けると考えていました。しかし、自分の体力低下分をあまり考慮していなかったこの時間配分は、結果的に失敗でした。


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谷の奥はるかに見えているのは、おそらく甲斐駒ヶ岳とその周辺の峰々だと思いますが、肝心の甲斐駒は雲隠れのご様子。


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最初の堰堤までは工事用の道路のような土手道上を歩くので、これといって苦労はありません。


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最初の堰堤を越えると、ここからはいよいよ本当の荒野の始まりです。もはや作られた道はありません。


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広い荒野のような河原歩きのあとで、今度は渡渉点が現れました。けっこうな川幅ですが、水が少なく水深が浅いので、石を伝ってわたることができました。


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渡渉点から少し先の右岸上に、廃屋がぽつんとたたずんでいます。かつては山小屋だったのでしょうか。しかし、ずっと奥にある丹渓山荘以外に地図には何も載っていません。


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だいぶん川幅が狭くなってきました。


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再び渡渉点です。


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このあたりは、川幅が狭く、流れがいくつもに分かれているので、小さな渡渉を何度か繰り返します。


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ますます川幅が狭まってきた頃に、堤防が見えてきました。白岩堤防というやつのようです。


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白岩堤防の手前は、ルートが右岸斜面上を巻いていくので、滑って落ちたら大変です。入山時はまだ雪が固まっていなかったので、それほどでもありませんでしたが、下山時はかちかちに凍りついていて大変でした。


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9:08 白岩堤防に到着です。


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白岩堤防の先には、別の堤防(白岩第二堤防というらしい)も見えています。戸台からはるか彼方に見えていた山も、少し大きく見えるようになってきました。


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白岩第二堤防へは長い凍結した階段を登ります。ここも、つるつるで大変です。


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白岩第二堤防を越えると、再びだだっ広い河原歩きです。ここをまっすぐ突っ切って、今度は左岸へとルートが変わります。


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15分ほどで、別の堰堤が現れました。ここは、左岸側(向かって右側)を越えていきます。


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右岸の山が少し後退して、景色が雄大に見えるようになってきました。おそらく鋸岳の方向が見えているのだと思われます。


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このあたりから凍結路面が増え始め、多少のアップダウンも出てきたので、今回のために用意してきた簡易滑り止め「スーパースノーアイスパッド(870円)」を使ってみることにしました。クランポンをつければいいのですが、割と平坦な道で石があるような道だとかえって歩きにくのです。3月の上高地に行ったときに凍結した林道歩きに難儀したので、平坦な雪道を歩くような場合は簡単な靴用滑り止めを使ってみようと思ったのです。


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類似のものには、靴底全体で履くタイプもありますが、少しでも軽く小さいものということでこの商品にしたわけです。装着は簡単で、マジックテープで靴に巻きつけるだけ。これだけでも、凍結路面には十分効果がありました。た・だ・し、しばらく歩いているとすぐに外れてしまいます。なので、結局ほとんど役に立ちませんでした。どうせ買うなら靴底全体に装着するタイプのほうがよさそうです。しかし、あれもけっこう重いしかさばるので、軽量化を考えればあきらめて早めにクランポンを装着したほうがよさそうです。


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10:35 河原歩きのルートが、途中から左岸の林の中へと入っていきます。いよいよ丹渓山荘も近いのかと期待しましたが、まだまだでした。


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森の中をひたすら歩きます。時折、森全体を揺さぶるような強い風がゴォーっと吹き抜けて行きます。このときは、ウール厚手のアンダーウェアの上に直接ソフトシェルを着ただけの服装でしたが、歩いている分にはちょうどいいものの、風が吹いた瞬間は一気に冷気が体にしみこんできます。冬場のウェアリングは難しいです。


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鋸岳熊穴沢ルートの分岐です。地図のコースタイムではここから丹渓山荘まで20分です。長い河原歩きももうすぐ終わりです。


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迷路のような森の中を、踏み跡とテープナビを頼りに進みます。


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突然現れた丸木橋。表面には凍結した雪が張り付いています。何もつけていない靴底でこれを渡るのは、なかなか大変です。落ちてもおぼれるような沢ではありませんが、氷点下の気温でびしょ濡れになるのはなんとしても避けたいものです。


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11:44 左手の崖の上に丹渓山荘が見えてきました。4時間近くもかかった河原歩きがようやく終わりました。コースタイム3時間のところを、すでに50分もオーバーしています。この時点で、当初考えていた1時間の余裕をすでに使い果たしてしまったわけです。この先、本格的な登りになる区間なのに、はたしてどれぐらいのペースで登れるのか、日が暮れる前にテント場にたどり着けるのか、心配の種は尽きません。


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丹渓山荘の下には、テントが二張り。こんな時間にこんなところにテントを張っているということは、どこか近くの岩場を登りに来たのでしょうか。


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ここで休憩をかねて、クランポンを装着します。いままでは、グリベルの10本爪G10ワイドを使っていましたが、南アルプスデビューということで、12本爪のグリベルエアーテックニューマチックを購入しました。実際問題、10本と12本で大差ないのですが、急斜面のトラバース時はやはり爪が2本余計にあるほうが心強いということで、今回デビューとなりました。セミワンタッチというのもポイントです。爪の長いG12にしなかったのは、岩の露出しているような場所では爪の短いエアーテックのほうが歩きやすく、爪を引掛ける心配も低いという理由です。南アルプスは北アルプスと違って豪雪地帯ではないので、この時期はまだ積雪がそれほど多くなく、岩が出ている場所が多そうだというわけです。


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12:00 クランポンを装着し、ポットの熱い
お湯でカロリーメイトとチョコレートを流し込んで、北沢峠までの長い急登に挑みます。


ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。



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崖の上に登ってみると、緩やかにゆがんだ丹渓山荘の廃屋が静かにたたずんでいました。南アルプス林道が開通するまでは戸台から甲斐駒や仙丈ケ岳への登山道の要としてにぎわったのでしょうが、夏の登山客を南アルプス林道のバスに奪われ、冬期のわずかな登山客だけでは営業が成り立つわけもなく、息絶えるように閉められた山小屋です。今、ここを通過してみて思うのは、せめて避難小屋として冬期に開放してくれれば、案外助かるのにという思いです。


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小屋のすぐ脇から始まる急登をこなしたら、少しの間沢沿いの斜面をトラバースします。その先で沢に突き当たったところで沢を越えて、いよいよ八丁坂が始まります。


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ジグザグの急勾配を登りきったところにちょっとした休憩スペースのような場所があり、重い荷物を下ろして休憩することができました。写真を撮ろうかという余裕もでます。


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この場所からは、向かいの山腹を走る南アルプス林道が見えました。あの道の高さまで登れば北沢峠があるというわけですから、こうしてみるとそれほど標高差があるわけではないようです。もっとも、あちらの道もまだ左手に向かって登っていくわけですから、実際の標高差は見た目以上あるのも事実です。少なくとも、今見えているあの山の上まで行く必要はないというだけでも気持ちは楽になります。丹渓山荘から後になり先になりしながら歩いてきた赤いジャケットのソロ男性が追いついてきたので少し話をしたところ、林道を何度か越えたところで山小屋が一軒あり、そこからさらにもうひと登りしたところが北沢峠だとか。う~ん、それほど甘くはなさそうです。


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休憩した場所からは、しばらくわりと平坦な森の道が続きます。大きな洞が口をあけている巨木もあり、静かな針葉樹の森が広がっています。ところで、このあたりから指先の痺れがひどくなってきました。痺れというより痛みに近いものがあります。おそらく標高が上がったことで気温が下がったのが原因なのでしょう。このときは、モンベル ジオラインインナーグラブ、ブリッジデイル Bdメリノグラブ(中厚)、イスカ ウェザーテック ライトオーバーグローブの3レイヤーでしたが、さすがに氷点下になるときついものがあります。


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13:59 最初の林道との合流地点です。当初、これが南アルプス林道だと思っていたのですが。地図で見るとこんなところで南アルプス林道と合流するようになっていません。どうやら、支線のひとつのようです。


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14:06 二つ目の林道合流地点です。林道がちょうどカーブしているところで合流しているので、ここから50mほど林道を歩きます。


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「八丁坂仙水峠線」の道標から、再び林道と分かれて森に入っていきます。


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14:16 三つ目の林道合流地点です。ここで指先の痛みが我慢できなくなり、Bdメリノグラブをイスカ シェトランドウールグローブに取替え、なおかつオーバーミトンもはめました。オーバーミトンは念のためですが、さすがに指がパンパンでストックをしっかりと握れなくなってしまいました。それでも凍傷になったら困るので、背に腹はかえられません。


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14:52 長い森の中の坂道にいい加減うんざりしてきた頃、ようやく坂の上に小屋が見えてきました。


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小屋からさらにもうひと登りあるという話をすっかり忘れて、北沢峠に着いたんだ!と大喜びで小屋の前まで登っていったところ、林道はさらに左手に向かってずっと上り坂になっています。


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休憩を終えて出発した先行の登山者が、そこからまた森の中へと入っていくではありませんか。少しの間意味がわからず立ち尽くしていたのですが、ようやくここからもうひと登りの話を思い出して、背中の荷物がますます重くなったように感じました。


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大きな雪の塊に座り込んで、脱力したようにぼんやりと目の前の風景を見ていましたが、このまま座っていてもゴールはぜんぜん近づいてこないということを思い出し、最後の登りへと向かったのでした。それにしても、この最後の坂がなんとつらく厳しいことか。おそらく、多くの人がここが北沢峠だと喜び勇んで林道に出てきて、きっと失望で体中の力が抜ける虚脱感を味わったことでしょう。


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15:18 急勾配の山道を何度も切りかえし、あそこまで行ったら絶対休憩してやると思いながらたどり着いた場所には、平坦な道路がありました。右を見ても左を見ても、上り坂はありません。やっと、本日の最高地点にたどり着いたのです。もう、これ以上は1cmたりとも登らなくていいのです。


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ほぼ平坦な林道をだらだらと下っていきます。


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下った先には北沢峠の看板がありました。


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看板の背後には、こじゃれた洋館風の山小屋「長衛荘」があります。年末年始だけ営業しているようです。今度来るときは、ここに厄介になりたいものです。


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このときの気温、-6度。寒いです。


北沢峠で旅も終わりかと思いきや、まだ先があるのです。ここからさらに200mほど下って、そこからさらに5分ほど行った先が目指すテント場です。このルートは、どこまでも登山者の体力と気力を試す意地の悪いルートです。


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15:41 やっと、やっと目指すテント場が見えました。これで本当にもう歩かなくてもいいのです。目論見よりもほぼ1時間20分も余計にかかってしまいました。河原歩きで50分オーバーですから、そこからの登りで30分さらに費やしてしまったというわけです。もっとも、あのきつい登りで30分しかオーバーしなかったのなら、まだましなほうかもしれません。


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マイホームの建設地は、登山道からすぐの場所に決めました。トイレにいくのも近くて便利です。雪の硬い部分と柔らかい部分があったので、硬いところだけにテントが納まるように整地して、設営に取り掛かりました。ところが、時々風が吹いてい来るもので、ペグダウンするために雪を掘っているとテントが飛ばされそうになったりで、簡単にはいきません。かじかむ指で細かい作業もうまくいかず、紐を結ぶのに何度もやり直したりと、とにかく無雪期のテント設営の倍ぐらいの時間をかけて、ようやくテントが張りあがりました。もっと設営の簡単なテントがほしいとつくづく思ったのでした。


夕食後、寒いしすることもないので、すぐに寝袋にもぐりこみました。まったく季節はずれの6月に62%オフで購入したプロモンテ エクストリームライトシュラフ(-25度対応)の寝心地はいかに!? 快適は快適です。しかし、やっぱり寒い。参考までに服装はというと、

<上半身>
TNF NT30153 PARAMOUNT TANK(ポリプロピレン製メッシュベスト)
モンベル スーパーメリノウールエクスペディション(山行直前にビビッて購入)
モンベル シャミースインナージャケット(これも山行直前にビビッて購入)
モンベル ULダウンジャケット

<下半身>
モンベル ジオラインLWタイツ
イズミヤ グッドヒートタイツ厚手
モンベル ULダウンパンツ

<足>
モンベル 五本指ウールインナーソックス
アンゴラウサギの毛の厚手ソックス(スキー用ノンブランド)
イスカ ダウンプラステントシューズロング

てな具合です。こうしてみるとモンベル製品が多いです。会員になっておいたほうがよかったかなあ・・・

で、寒いといっても下半身はそうでもなく、足と上半身が問題です。寒さ慣れしていない初日であり、疲労困憊で体力が落ちていると寒さを感じやすいので、そのせいなのでしょう。そうはいっても震えて眠れないのも問題です。


そこで、一番問題である足の冷たさを解消するために、テントシューズの中にホッカイロを貼り付けたら、これが大成功! 足がぬくぬくしてくると、寒さも和らぎます。顔の開口部を思いっきり絞って口だけ出しているようなミイラ状態でも、まだ首周りや肩周りが寒いのには、いつも持ってきているシルクトラベルライナーという絹のインナーシーツで首から肩を包むように巻いてやると、これも効果覿面! やっと、眠りへと落ちていったのでした。


つづく。





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| 2013年1月 仙丈ケ岳 | 12:12 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

Re: タイトルなし

山の写真屋(燕の子)さん

確かに、冬はなぜか知らない間に時間が経っていたりして、
時間間隔が夏と違うみたいですね。
荷物による血行の障害も確かに感じました。
特に、肩への加重を減らそうとウエストベルトを
しっかり閉めると、下半身が寒くなるということを実感しました。

手袋も、カメラ操作などを考えてフィットしたものを選んだんですが、
もう少し余裕があったほうがいいのかもしれません。
アドバイスありがとうございます。

| ヤマふぉと | 2013/01/05 22:16 | URL |

冬は夏と違い何をやるにも思わぬ時間がかかりますね。雪道は踏み跡がしっかりしていても足には大きな負担がかかり続けていますから重装備の場合は思わぬ時間がかかってしまうのも仕方ないことですね、今回は許容範囲ではなかと思います。
ザックが重いと腕の血流が悪くなり手が冷たくなりやすいです時々血行促進を図る必要があるかもです!手袋はゆとりあるサイズが温かいです。続き楽しみです

| 山の写真屋(燕の子) | 2013/01/05 12:24 | URL |















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