ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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四国遠征第二弾 白銀の雪稜:石鎚山 その2

2012年2月12日 石鎚山(標高1982m) 日帰り山行 


霧氷の花を枝いっぱいにつけた大木の姿にしばらく見とれていたあと、ふと我に返ったように荷物を背負い、僕は先をめざして歩き始めた。


歯ブラシのような霧氷
この森は、同程度の標高の他の山よりも低木が多いような気がする。そのため、登山道の両脇から霧氷が張り付いた木の枝が覆いかぶさるように伸びていて、歯ブラシのような霧氷の様子をたやすく観察することができた。


冬芽
春を待つ冬芽も、凍てつく寒さの中でじっと暖かくなる日を待ち望んでいるようだ。


迷路の森
やがて登山道の勾配が急激に増し、呼吸が乱れ始めた。両脇に密生する木々が白い枝で視界をふさぐので、巨大な迷路を歩いているかのような気にすらなってくる。


前社ヶ森
10:35 小山のような岩塊の下を巻いて、急傾斜を登り返しながら上を見上げると、ふたたび真っ白い雪華を全身にまとった大木が目に飛び込んできた。大木の足元には寝そべるように粗末な小屋があるが、深い青色に塗られた小屋の外壁と、背後に広がる空の色が不思議な調和を見せていた。


試しの鎖の岩
山小屋かと思ったその小屋は、前社ヶ森という場所に建つ茶屋らしいが、冬季は無人の小屋になっていた。小屋のすぐ脇には、ついいましがたその足元を巻いてきた巨大な岩塊がそびえていた。この岩塊が「試しの鎖」といわれる鎖場だそうだが、さすがに積雪期にわざわざ鎖を伝い岩塊を超えるルートを来るものはいないようだった。


前社ヶ森から見た瓶ヶ森
小屋の前に立つと、正面に瓶ヶ森の白い頂が見えた。山頂部が広大な笹原になっている瓶ヶ森は、麓の石鎚山ロープウェイ乗場からさらに林道を奥に入ったあたりからルートがあるようだが、ロープウェイが利用できないため、石鎚山よりもタフな登山になりそうだ。
”次はあそこだな”
そんなことを思いながら、瓶ヶ森の白い頂をしばらくの間眺めていた。


前社ヶ森から先の道
前社ヶ森で小休止をとったあと、再び迷路のような白い森の中に向かった。晴天の日差しを浴びても、霧氷は融け落ちることなく木の枝に張り付いていた。


瀬戸内海を見渡す
森を抜け、見晴らしのいい尾根上に出ると、穏やかな瀬戸内海の様子や、麓の街の家並みまできれいに見えていた。海の向こうに伯耆大山の頂が見えないかと探してみたが、水平線近くはすこし靄っていて、それらしい頂を見つけることはできなかった。


森の向こうの瓶ヶ森
登ってきた方角には、瓶ヶ森が相変わらず寄り添うようにたたずんでいた。


夜明峠
11:22 森を抜けると、突然目の前に石鎚山が大きく立ちはだかった。手前には、輝く霧氷を身にまとった木々が点在する鞍部が緩やかに広がっている。この登山道中、もっとも美しい場所とされる夜明峠(よあかしとうげ)に着いたのだ。正面にそびえる石鎚山の岩峰が迫力を持って天に突き上げている。日の光を浴びて穏やかな表情の弥山に対して、最高峰の天狗岳は抜けるような青空の中黒々と沈み込んでいた。沈思黙考しているかのようなその姿は、畏敬の念を抱かせる雰囲気があったが、同時に魅力的でもあった。


夜明峠案内板
標高でいうと、夜明峠がちょうど登山道の中間点に相当するということらしい。高木が少なく、疎林といってもいいような雰囲気の峠は、そのおかげで見晴らしがよく、陽光にあふれた明るい峠だった。


無名峰
石鎚山の北西にある1920.6mの無名峰の切り立った断崖が、荒々しく空を切り裂いていた。


記念撮影
夜明峠の青と白がせめぎあう世界で、わずかな時間を過ごした。記念写真をセルフタイマーで1枚撮り、荷物を降ろしてあたりの風景を撮影して歩いた。


夜明峠の木々
これほど美しい霧氷の森を見るのは初めてだった。すべての木々が信じられないほど白い氷で枝という枝をびっしりと飾りつけ、太陽の光できらきらと輝いている。

夜明峠から瓶ヶ森

モンスターの木
空の青を除いてはモノトーンの世界に近いのだけれど、ありたっけの色を並べたお花畑と比べても、この白い世界のほうが色彩にあふれていて美しいと感じるのではないかという気さえしてくるほどだった。


山頂への道
後ろ髪を引かれる思いで夜明峠を後にした僕は、はるか頭上にそびえる岩の峰を目指して、本格的な急登が続く道へと歩き出した。


夜明峠を振り返る
振り返ると、白く染まった夜明峠の向こうに、およそ冬とは思えないほど穏やかな瀬戸内海と西条の街並が見えていた。ほんのわずかな距離と標高の違いが、これほど異質な世界を隣り合わせに作り出すのだ。自然の不思議さとともに強引なまでの力強さを感じた瞬間だった。


二の鎖の鳥居
12:08 二の鎖の分岐に着いた。鳥居の上にいくつか古ぼけた小屋が建っていたはずだが、跡形もなく消えうせている。小屋で食事にさせてもらうつもりだったのに、当てが外れてしまった。


土小屋ルート分岐
ここは土小屋ルートとの合流点だ。2009年5月に土小屋ルートを経由してここに来たことが思い出される。さすがに石鎚スカイラインや瓶ヶ森林道が通行止めになる積雪期に土小屋ルートを登ってくる人はいないらしく、雪面にはトレースの痕跡すら見当たらなかった。


鳥居から一段上がった平坦な場所で荷物を降ろした。かつて小屋があったと思われる場所に、雪の中からわずかに頭を覗かせた石垣があったので、そこを椅子がわりにすることができた。少し強めに吹き始めた風から体を守るためにジャケットを着込んで、手早く食事をとった。食事をしながら周囲を見渡してみると、バックパックが2つ、近くにあるブルーシートで覆われた建築資材か何かの上に置いてあった。どうやら重い荷物をここにデポして山頂へ向かったらしい。
”その手があったか”
ここから山頂までは傾斜が急になる上に、雪の積もった鉄階段を歩かなければならない。重い荷物などないほうが身軽でいい。さいわい天気は崩れる予兆など微塵もない。


二の鎖迂回路入口
食事を終えると、座っていた石垣のそばに荷物をまとめてデポした。風で体感気温が低いため、ジャケットはフリースの上に着たままで行くことにした。アックスとカメラと行動食だけを身につけて、僕は山頂に向けて出発した。


鉄階段
勾配のきつい斜面を真横にトラバースするように少し歩くと、鉄製の階段が現れた。以前来たときは二の鎖を登ったので、この階段の道は初めて通ることになる。完全に雪に埋もれているのかと思っていたが、意外にもきれいに除雪されたようになっていたので、少し安心した。


天狗岳の岩峰
二の鎖をぐるっと遠回りして登りつめたところで、石鎚山の大岩壁を真正面に見ることができる場所に出た。中央の黒々としたドーム上の岩峰が天狗岳だろう。3つの岩峰が寄り添っている様は、伯耆大山のとなりにある烏ヶ山のようでもある。撮影ついでに少し休憩をとってから、再び上を目指した。


半分埋もれた階段
二の鎖の迂回路よりも三の鎖の迂回路のほうが傾斜も急になり、階段の半分は完全に雪に埋まっているところが多くなった。階段は中央部分にしか手すりがついていないので、崖側はまさにがけっぷちを歩いているような情況だ。高所恐怖症の人は、まず足がすくんで歩けないことだろう。かつての自分なら、そうとうビビッていたに違いないが、北アルプスの大キレットを歩いてからというもの、これぐらいの状態であればそれほど恐怖心を感じなくなった。高所恐怖症は、ある程度のショック療法で克服することはできるようだ。

雪に埋もれた階段
しかし、ついに階段全部が雪に埋もれている状況になった。わずかに雪の上に顔を出した手すりにつかまりながら、中腰のまま慎重に足を進めていかなければならない。重い荷物を背負っていたらかなりつらい姿勢だが、空身ゆえにそれもたいした苦痛ではなかった。


完全に埋もれた階段
進むにつれて状況はさらに悪化し、ついに階段は完全に雪に埋没してしまった。こうなるともはや階段ではなく、ただのトラバース道だ。アックスを雪面に突き刺し、クランポンの刃がしっかりと食いついている感触を足の裏で確認しながら、僕は歩き続けた。


絶壁を這う階段
山頂直下の階段は、ほぼ垂直に近いと思われるほどの急斜面に設置されていた。幸いにも手すりがわずかに見えていたので、手すりをつかみ安全を確保しながらその階段を渡り始めた。足の下にはめまいがしそうな高さの空間が、大きく広がっていた。恐ろしいほどの高度感をたっぷりと味わいながら階段を渡りきると、僕は大きくひとつ深呼吸をした。それは、安堵のため息でもあり、高ぶった気持ちを静めるためでもあった。


展望開ける
そして、ついに視界が大きく開けた。正面右手に西ノ冠岳、左手奥に二の森がくっきりと見えていた。頂上はもうすぐそこにある。


山頂への石段
頂上山荘下の石段を歩くと、クランポンの刃が悲鳴を上げたが、かまわず歩き続けた。石段の先にはもう斜面も階段もない。あるのは青い空だけだった。



つづく。


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| 2012年2月 石鎚山 | 20:15 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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