ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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寒風冷雨の過酷な山旅: 黒部五郎岳 vol 1

2011年7月26日~31日 岐阜・富山県境 黒部五郎岳

今回の山行は、いまだかつて無い最悪のものとなりました。何が最悪かというと、もちろん天気。それだけでなく、登山道の状態、計画の消化具合、装備関係などなど、どれもこれも悪いほうにばかり転んでしまい、いまだかつてないつらい山旅でした。もともとは「黒部源流の山旅」という予定でしたが、結果的に三俣山荘まで往復しただけで、途中通過地点である黒部五郎岳に登頂した以外なにもない山行になりました。



7月最終週に予定を決めたのは、いつものことといえばそれまでですが、要するに早く行っても高山植物が開花していないからです。やはり夏山の写真には、綺麗なお花畑と名峰の組み合わせがほしいわけです。しかし、時期的には梅雨明け直後の7月中旬あたりのほうが天気がいい場合も多く、7月下旬は不思議と天気が良くないことが多いのですが、それでも過去にはたいてい1日は好天に恵まれていました。

今回は台風が過ぎ去ったあとだったので、快晴とまでは行かなくてもそこそこ好天に恵まれるのではないかという思いが先に立ち、荷物も暑さ対策に重きを置いたものに自然となっていました。この思い込みに拍車をかけたのが、直前まで注視していた天気予報です。

7月25日衛星写真
25日の衛星画像では大陸に特別やばそうな雲は無く、これならしばらくは安定した天候が続くだろうと考えたわけです。この時点でフィリピン東方に熱帯低気圧が発生していましたが、台風に発達したとしても日本に影響を及ぼすには数日はかかるだろうと考えていました。また、中国大陸には低気圧がいくつかできていましたが、等圧線の間隔が広く、気圧もそれほど低いわけでもなかったので、曇りがちぐらいの天候だろうと予想していました。長期予報でも曇りの予報が続いていました。

そんなわけで、今回はスポーツウェアとして販売されている吸湿速乾ストレッチ素材のアンダーウェア上下と短パン・Tシャツを着用することにしました。いわゆる山ガール・山ボーイスタイルです。県内の低山で試した限りでは、いつも着用しているブレスサーモライトウェイト長袖に比べると速乾性能は劣るもののからっとした着心地は悪くなく、汗をかいても快適でした。特に下半身の涼しさは登山パンツよりもかなり快適です。天候がそれほど荒れないのであれば、多少速乾性能が悪くてもあまり汗冷えを心配しなくていいだろうし、生地が厚めの分夜間の冷え込みにはかえって有利だろうぐらいに思っていたのでした。しかし、これが大きな間違いだったのです。

7月26日GPS地図
そして、今回選んだ登山道が飛越新道・神岡新道です。黒部源流域への登山ルートの中でも読売新道と肩を並べるマイナーなルートですが、知名度からすれば読売新道よりもはるかにマイナーかもしれません。なぜこのルートにしたかというと、折立ルートも小池新道もすでに何度もたどっており飽きていたことです。また、北ノ俣岳の手前に湿原が広がっているということで、湿原好きの自分としてはやっぱり見ておきたかったというのもありました。しかし、この選択も間違いのもとでした。


さて、25日の夜に富山に着いて、食事と風呂を済ませたあと、いつものように神岡方面へと向かいました。当初の予定では飛越トンネル入口まで行って車中泊の予定でしたが、通ったことの無い真っ暗な山道を走ると道迷いの可能性があることや、水場がなさそうという理由で、神岡の道の駅で車中泊することにしました。

26日の明け方4時ごろ、どしゃ降りの音で目が覚めました。うそだろ?と思いながらしばらく様子を見ていると、4時30分頃には雨が止んだのでほっと胸をなでおろし、急いで朝食をとり5時過ぎに出発しました。

飛越トンネルに向かうルートは道の駅のすぐ近くから出ている県道484号を使うほうが早そうですが、なにしろ3桁県道です。地図でみただけでもそのジグザグさと道の細さにどうも気が進まず、遠回りながら上宝町双六から双六川沿いの大規模林道で行くことにしました。こちらの道は対向2車線の広い道で、走りやすいいい道です。気持ちよく車を走らせていると、路肩のガードレール下に黒い動物がいるのが見えました。ん?と思ってよく見ると、なんと熊です。車が近づくとすぐに藪の中に消えていきました。大きさからするとツキノワグマの子供だったようですが、野生の熊を見たのはこれが初めてです。これから通る登山道で、もしかして熊と遭遇なんてことになったら・・・とこの時点でかなりビビリが入ってしまいました。熊除けの鈴は一応持っていますが、あんまり大きな音が出ないのでいつも買い換えようかなんて思いながらそのままにしてきたつけをこんなところで払わされるのかと、すっかりトーンダウンです。

飛越トンネル前
6時過ぎに飛越トンネル入り口に着きました。駐車場には車が4台ほど停まっていました。新穂高温泉や折立の駐車場に比べるとさすがにがらがらです。簡易型のトイレはあったもののやはり水場は無く、飲み水として2リットルのペットボトルをスーパーで買ってきたのは正解でした。プラティパスに水を詰め替えハイドレーションチューブを取り付けましたが、バックパックの中に押し込むにはややきつかったので、フロントのポケットの中に入れることにしました。ただ、これだとチューブの長さがぎりぎりで、首を真横にしてなんとか飲めるという状況でした。それでも、むりやり内部に押し込んで、破れて荷物を濡らしてしまったら馬鹿らしいので、とりあえずこのままいくことにしました。

飛越新道入口
6:40 出発です。トンネルに向かって左手にある電柱のところから登山道が続いています。

登山口からトンネル上の稜線まではけっこうな急登らしいので、あせらずゆっくり行くことにします。

飛越新道
以前誰かのブログで見た情報では、草ぼうぼうのルートだと書かれていましたが、登山道脇の笹や雑草は綺麗に刈り取られていました。

尾根上に出たところ
7:02 尾根まで登ってきました。ここから道は右手に曲がり、稜線に沿って東に向かいます。比較的緩やかなアップダウンをこなしながら15分ほど歩くと、送電線の鉄塔下を通過します。ここからややきついのぼりが始まります。

くま洞峠道標
7:51 くま洞峠という看板があるところに来ました。地図には記載の無い場所なので、いったいどこらあたりなのかよくわかりません。

くま洞峠地図
帰宅後調べてみると、登山口と神岡新道分岐とのちょうど中間あたりで、登山道が90度に屈曲する場所だったようです。

すべる木ブロック
くま洞峠から先はあまり高低差の無い緩やかな尾根歩きが続きますが、このあたりから道はぬかるみになっている場所が多くなってきました。そして、ぬかるんでいるところには、写真のような丸太を輪切りにしたものを敷いていたりするのですが、これがまた氷のようによく滑るのです。どうせ敷くのならチェーンソーで滑り止めの溝ぐらい掘ってくれればいいのですが、何の加工もしていない湿った木の切り口はまるで登山者を陥れるためのトラップのようなものです。これ以後、こういうものがたくさん出てくるので、この道は要注意です。

ぬかるむ登山道
ずぶずぶのぬかるんだ道を進み、

木の根
木の根が折り重なる場所を乗り越えて進んでいくと、

道端のニッコウキスゲ
道端にニッコウキスゲの群落が現れました。

ニッコウキスゲの群落
ちょうど登りがきつくなってしんどいときだったので、さわやかな黄色の花に癒されたような気がしました。

神岡新道分岐の広場
9:23 やっと標高1842mの神岡新道との合流点に着きました。明け方どしゃ降りがあったためか途中の道はどこも地面が濡れていて、ここまで荷物をおろして休憩することができませんでしたが、ここは6畳ほどの広場になっていて乾いた地面だったので、やっと荷物をおろして休憩することができました。

神岡新道分岐
立木に取り付けられていた道標の下に、「神岡新道は草刈などの整備をしていないので通行に注意してください」という注意書きが掲示してありました。最近はここから下の神岡新道はあまり利用されていないようです。15分ほど休憩してから、寺地山に向けて出発しました。

神岡新道
神岡新道に入ってから寺地山までの道は、平坦な尾根を行くフラットな道です。そのぶんぬかるみ度も増してきます。

ギンリュウソウらしきもの
足元に不思議な花のようなキノコのようなものがありました。最初ギンリュウソウだろうと思っていましたが、頭の形がなんとなく違う気がします。なんだか目玉オヤジみたいな頭でちょっと不気味。まあ、ここから頭が開いて見慣れたギンリュウソウの形になるのかもしれません。

ニッコウキスゲのお花畑
10分ほど歩くと突然ニッコウキスゲが満開のお花畑に出ました。黄色い花に彩られた登山道なんて、見るのも通るのも初めてです。

ニッコウキスゲのアップ
いままでこれほどたくさんのニッコウキスゲを見たことが無かったので、荷物の重さも忘れてすっかりいい気分で歩くことができました。

湿原状態の道
しかし、すぐに厳しい現実に直面しました。登山道は、ぬかるみというレベルを通り越して湿原地帯の様相を呈してきました。ストックで地面の状態を確認してみると、脚を踏み入れれば確実にくるぶしあたりまで埋まりそうな状態です。ぬかるみの縁を回りこんでやわらかいところを避けながら歩かなければならず、神経も使うしスピードも上がりません。

お花畑とぬかるみの道
これ以後たびたびお花畑があるものの、道は泥沼状態が普通になり、花に癒されながらもぬかるみにうんざりするという山行が2時間以上も続くことになるのです。

さらに精神的に消耗させられたのが、フラットすぎる道の状態でした。神岡新道合流点から寺地山までは直線距離で約2.5kmありますが、その間の標高差はわずか150mほどしかないのです。新穂高温泉からわさび平までだって標高差は約200mあるのです。林道よりも標高差がない登山道なんて、効率が悪すぎます。歩いても歩いても標高を稼げず、ぬかるみが行く手を阻み、つるつるの木のブロックに神経をすり減らし、その上ストックが簡単には抜けないのでいちいち力を入れて引き抜かなければならないなど、精神的な消耗だけでなく体力的にも厳しいルートだったのです。マイナーなルートは、それなりの理由があるから人気が無いということがよくわかりました。やはり登山道は潔いのが一番です。登るなら登る。それも中途半端に緩いのではなく一気に高みを目指すというのがやる気も出るし、めんどうくさくなくていいです。下るときも一気に下ると思いのほか早く下れて疲れません。

鏡池
10:38 神岡新道分岐と寺地山の中間にある鏡池に着きました。鏡池というからにはそこそこの池があるのかと思っていましたが、湿原の中の直径わずか1.5m程度の小さな水溜りのような池でした。ただ、この鏡池のある場所はかなり広いお花畑になっていて、半端ない数のニッコウキスゲが咲き乱れていました。

寺地山への登り
鏡池からは寺地山への登りとなります。いままでがほとんどフラットに近かったためか、このわずかな上り坂がけっこうな急登に感じてしまうのも、精神的・肉体的につらいものがありました。

ドライパイナップル
たまりかねて途中で一度荷物をおろし、甘いものでエネルギー補給です。チョコレートは定番ですが、今回初めて持ってきたドライパイナップルがめちゃうまでした。甘酸っぱいパイナップルの風味が疲れた体に心地よく染み渡ります。

寺地山頂上
11:17 あえぎながらやっと寺地山に到着です。標高1996mですが、GPSではなぜか2003mになっていました。山頂の少し手前にもニッコウキスゲの花畑がありましたが、山頂の道標前のほうが地面が乾いていて休憩するには適しています。もっとも、展望のまったく無い山頂なので、たんなる休憩場所としてしか意味はありません。ただ、山頂を越えて北ノ俣岳方面へ向かう下り斜面からは展望が開けていました。でも、あいにくのガスでこの日は何も見えずです。

寺地山から北ノ俣避難小屋までのルートも、一度鞍部に下りるため相変わらずのぬかるみ地獄でした。それでも上り返し始めると次第に状態がよくなり、歩きやすくなります。

北ノ俣岳の草地
12:41 森が突然切れて目の前に大きな草地が見えました。北ノ俣岳西面にこんな大きな草地が広がっているとは知りませんでした。

草地からの展望
振り返ると、いつの間にかガスが晴れて、遠くの山並みまで見えるようになっていました。

北ノ俣避難小屋外観
12:55 北ノ俣避難小屋に到着です。ちょっと遅いですがお昼の時間なので、ここでゆっくりと昼食をとることにしました。

避難小屋内部
小屋のすぐ前に水場もあり、中はわりとこぎれいで、奥のドアを出たところにトイレもあるので、これなら宿泊してもいいかという感じです。

行動食で軽い昼食を食べながらこのあとのことを考えました。13時30分に出発したとして、太郎平まで3時間、テント場までさらに20分かかるので、休憩込みで約4時間が必要になります。とするとテントを張り終えたら18時頃です。時間的にはそれほど問題ないのですが、今から2時間登って2時間下るというのがどうもめんどくさいという気になってきました。その上、明日の朝は再び1時間半かけて北ノ俣まで戻ってこなければならないのです。なんだかものすごく時間の無駄のような気がします。ここまでの道のりでけっこう疲れていたこともあって、それならここに泊まったほうが体も休まるし効率的だろうと判断し、太郎平はキャンセルして避難小屋に宿泊することにしました。

昼食後、時間があったのでカメラだけもって草地のほうへ少し上がってみることにしました。避難小屋への分岐から上には木道が続いており、ぬかるみの道にうんざりしていた身にとっては、この上なく心地いいルートです。

草地の上部からの展望
10分ほど登ったところで木道にすわり、流れ行く雲と静かな風景をのんびりと眺めていました。そういえば、ここに来るまでにすれ違った人はわずか6人しかいません。今はもう人影も無く、静かな時間が流れています。登山道としては状態も良くないし効率も悪いし、けっして好んで歩きたい道ではありませんが、静かな山旅ができるという点においてはマイナーなルートならではの利点があるといえます。

けっこう長い時間ボーッと過ごした後、小屋に戻って宿泊の準備をしました。テントを張らなくて済むというのはやはり便利です。銀マットを敷いて、サーマレストのマットを膨らませ、シュラフを広げればそれでOK。あとは水の確保と食事の用意ですが、水は小屋の前までホースが引いてあるので、わざわざ遠くまで汲みに行く必要も無く、なんだかこじんまりとまとまっていて便利な小屋です。

26日夕食
17時には夕食をとりました。レトルトカレーとアルファ米は代わり映えのしないところですが、インスタントの豚汁に魚肉ソーセージを入れて気持ちだけ豪華なディナーです。

種抜き干し梅
食後は、紅茶を飲みつつ、疲労回復をはかるため種抜き干し梅をほおばります。この干し梅、軽いし塩分も取れるしクエン酸効果で疲労回復に利きそうだし、山食にはうってうけです。

日が暮れても誰も来なかったので、避難小屋は貸しきり状態となり、ひとりのびのびと使って寝ることができました。

つづく。


■山行データ
<所要時間> 6時間15分
駐車場6:40→トンネル上7:02→くま洞峠7:51→神岡新道分岐点9:23→鏡池10:38→寺地山11:17→北ノ俣避難小屋12:55

<標高差>646m(最低地点:駐車場1413m、最高地点:草地道標前2059m)

<登山道情報>
くま洞峠あたりから上の登山道はぬかるみが多い。特に神岡新道分岐点から寺地山間は湿原のような場所が多いので、登山靴に防水スプレーをしっかりと塗布しておいたほうがいい。また、泥汚れを防止するためにロングスパッツを装着することをお薦めする。ぬかるみに埋め込んでいる丸太の輪切りは、表面が湿っていると非常に滑りやすいので要注意。北ノ俣避難小屋は無人の小屋にしては綺麗に使われている。水は小屋までホースで引かれているので便利だ。トイレもあるが、それなりに汚れている。匂いはかなり強烈で、紙は常備されていないので持参が原則。小屋内にペーパーが置いてあることもある。使用済みの紙は自分で処理すること。くれぐれもトイレに捨てないように。






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| 2011年7月 黒部五郎岳 | 18:03 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

Re: タイトルなし

>みさわさん

初日は明け方降った以外は雨は大丈夫でした。
飛越新道・神岡新道ともそこそこ整備されていましたが、
なにしろコンディションが悪くてたいへんです。
草地から上もまたたいへんで・・・

| ヤマふぉと | 2011/08/06 23:13 | URL |

こんにちわ!(-´▽`-)

嵐の前の静けさでしょうか…
初日から大荒れだったかと思ってたので意外でした。
黒部源流入るときは大抵折立か新穂高なので、確かにたまには違うところから入りたくなりますよね。
もっと荒れてる登山道を想像してたんですが、結構整備されてるんですね。
ニッコウキスゲが綺麗ですね♪

また続き楽しみにしております(。・_・。)

| みさわ | 2011/08/06 11:21 | URL | ≫ EDIT















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