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ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。相互リンクはしていませんので、リンクはご自由にどうぞ。

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2010年7月雲ノ平で過ごす夏 vol 4

●5日目(7月29日) 雲ノ平
 朝になっても暴風雨は相変わらず。むしろ雨脚も風も強くなっている。本当は黒部五郎のテント場に移動するつもりだったが、暴風雨の中テントをたたむだけでも大変だし、ずぶぬれのテントは当然重い。まして目的地でテントを張るのも大変だ。こんなときは動かないに限る。ということで、何もすることがないので、ただ寝るだけだ。

 お昼ごろトイレに行きたくなったが、大雨と強風を突いてまで出たくない。しばらく我慢して様子を見ていたら、雨と風がほぼ止んできた。ここぞとばかり大急ぎで合羽を着てトイレに向かう。


戻ってきたときに、テントの周辺を点検すると、テントから3mぐらいのところに川ができていた。しかも結構な水量だ。その川はテントのほうへは流れていないので問題ないのだが、テントを張っている場所の一段上から水が流れ落ちてきて、水没したところが大きな水溜りになっていた。水たまりの水を抜くための排水溝をつくってはみたものの、これでは埒が明かない。そこで、上から流れてくる水の通り道を作り、川のほうへ導く。再び雨が落ちてきたので、大急ぎで作業を終えてテントに逃げ込んだ。


この作業中、合羽のパンツの右すそが靴の中に折れ込んでいたため、不覚にも靴の中を濡らしてしまう。ひどい状況ではないが親指の付け根の辺りが濡れてしまい、ソックスも濡れてしまった。小屋泊まりであれば、乾燥室に入れておけばすぐに乾くが、テントの場合濡らしたら最後、どうしようもない。ソックスと靴のインソールをガスコンロで乾かしてみたが、靴底の濡れている部分の水分を吸ってインソールがすぐに濡れてしまい、乾かすのはあきらめた。


夜になっても雨と風は衰えることを知らず、ますます強くなる。台風でも来ているのだろうか。ラジオの天気予報ではそんなことは言っていなかったはずだが・・・ 雷も鳴り始めて、かなりの悪天候になる。山での雷は本当に恐ろしい。音が半端ではないぐらい大きく、すぐ近くで鳴っているように聞こえる。ラジオを聴いていたら、雷の影響なのか、突然音がしなくなった。もともと手のひらサイズの小型ということだけで買った安物なので、寿命だったのかもしれない。


川と化すテント内
夕食後、うとうとしていると、今度は枕の左上のほうからちょろちょろと水が流れる音が聞こえてきた。また浸水かと思って調べてみるが、そうではない。もしかして・・・と嫌な予感でテントから首を出して前室を除いてみると、なんと川が流れている。しかもテントの下に吸い込まれているではないか。マットの下を触ってみるとあちこちふわふわになっており、さながらウォーターベッドだ。あまりの雨量に昼に作った上からの流れを導く水路から水があふれてきたらしい。


もはや流れをとめることはできないので、テントから半身のりだして砂利などを集めてテント下に堤防を作って、水がテントに沿って流れるようにする。テント下に入りさえしなければとりあえず問題ない。暗闇での孤独な土木作業を終えて、なんとかウォーターベッド状態を脱することができた。


ちなみに、今回のようにテント下が水没しても、テント生地の防水性に加えて中敷きとしてアルミ蒸着のウレタンマットを敷いてあり、その上に就寝用のクッションマットを敷いているので、水浸しで寝ることができないという事態にはならない。ところが、冷たい水がテント下に入ってくるとアルミ蒸着してあるマットが冷やされて、表面が結露してしまう。結果的に濡れた状態になってしまうので、事態を放置することはできない。テントを張るときは設営場所を良く見て、水が流れた後がないかを確認し、上から流れてきた場合に備えて排水溝を掘っておくことが大切だ。今回はどちらも気をつけていたのだが、予想を超える大雨で排水溝が役に立たなかった。


真夜中を過ぎた頃一時雨と風が止んだのでトイレに行ったが、10m先もよくわからない状況だった。テントを出るときに目印用にテント内にライトを残し、ヘッドライトを頼りにトイレに向かったのだが、足元しか見えない状態では平衡感覚も方向感覚も失われる。幸い、テントの場所は木道に近い場所だったので、木道まで出てしまえば迷う心配はない。しかし、かえってきたときにテントの明かりがなかったら、どこにテントがあるのか探しまわることにもなりかねない。テント泊するときは、ヘッドランプだけでなく必ずもうひとつライトを持っていくことをお勧めする。


●6日目(7月30日) 雲ノ平~双六
嵐の去った朝
 荒れ狂った暴風雨はうそのように止んで、静かな朝になった。テント場は一面濃い霧に包まれていた。怒涛のように流れていた川は、いつの間にか小さな流れになっていて、自分が作った排水溝を流れ下っていた水はない。よく見ると、一部決壊していた。そこからテント下に水が流れ込んでいたようだ。排水溝を作るときは、大きな石で堤防部分を保護してやらないと、砂利を積み上げただけでは水流に対抗できないようだ。そりゃそうだわなあ、などと思いつつ、ぐっしょり濡れたテントを眺めてため息ひとつ。


朝食後、パッキングを始めた。まだ雨が降るかもしれないので、カメラやシュラフなど濡れて困るものはビニール袋に入れたままザックにつめる。濡れた衣類もビニール袋に詰める。幸い予備の服はまだあったので濡れた服を着る必要はなかったが、昨日のような暴風雨のときに濡れた服で行動していると、もしかたら低体温症で遭難していたかもしれない。テント内といえども、着替えはかならずビニール袋に入れておくこと。今回の山行で得た教訓だ。テントを少しでも乾かそうと、支柱を残したまま横倒しにしてしばらく風に当てると、少しは乾いてくれた。


P1010498_20120704235554.jpg
テントをたたんでふと下を見ると、昨夜の水との戦いの跡がむなしく残っていた。


出発準備が整いザックを背負ってみると、ガスも食料もほぼ使いきっているのに濡れたテントのおかげで荷物が軽くなったように感じない。ひとまず黒部源流経由で三俣山荘までの行程なので、水を250ml程度に減らして軽量化に努める。基本的には下山のつもりだが、三俣山荘まで行って天気の状態を判断して、好天なら黒部五郎まで行くことにする。


テント場を出てすぐ、木道に白と茶色の羽が落ちていた。雷鳥のものだろうなと思って辺りを見回すと、ファミリーがいるではないか。両親のそろったファミリーを見るの珍しい。たいていは母子だけでえさを探している。こんなところにも雷鳥がいるとは知らなかった。ハイマツ帯と草地が入り混じるところは、雷鳥の住みかとして適しているのだろう。せっかくなので少し写真を撮ってから出発した。


黒部源流へ下る道
出発時間が遅かったので途中で登山者とすれ違う。大雨の後だけに、黒部源流が渡れるのかどうか気になっていたので、分岐路に着く前に誰かとすれ違えるぐらいの時間まで出発を遅らせたのだ。登山者とすれ違うときに黒部源流を通ってきたのか聞くと、そうだという。水の量は問題ないとのことで、わざわざ祖父岳を登るルートを取る必要はなさそうだ。


黒部源流に着いて見ると、確かに水の量は問題ない。だが、いつもよりほんのわずか多いみたいで、いつもは表面が水面上に出ている渡渉に使う石を水が流れている。ためしに足を乗せてみると、水の勢いがあるので靴の上のほうまで水が上がってくる。大荷物を担いでいるのでぽんぽんと飛んで渡ることもできず、靴を濡らしてしまいかねない。


渡渉地点よりも20mほど下流にもう一箇所石伝いに渡れる場所があり、行って見ると流れが緩やかで石は水面から出ている。ロープはないが渡るのに苦労するようなこともなく、靴を濡らさずに渡ることができた。荷物を降ろして、黒部源流の水で顔を洗い、ついでに頭も洗った。高天原温泉に行かなかったので、頭を洗うのは6日ぶりだ。雨水が混ざっているためか、いつものように切れるような冷たさはなくて助かった。北アルプスの最奥部、黒部源流のナチュラルウォーターで顔や頭を洗うなんて、考えてみれば贅沢な話だ。


三俣山荘に着いたのが11時を過ぎていたので、食堂で焼きそばを食べる。700円。カレーやラーメンもあるが、山行中の食事が朝はうどんやそば、夜がカレーやパスタというものばかりだったので、同じようなものとはいえちょっと趣向の違う焼きそばを選んでみた。しかし、すっかりしなびて紙のようなキャベツの入った焼きそばは、正直あまりうまくない。三俣山荘で昼食をとる場合、焼きそば以外のものが無難なようだ。


山荘から見上げる三俣蓮華岳は厚い雲に覆われて山頂は見えない。遠くの空にも青空はなく、どうやら天候の回復は望めそうもないので、下山することにした。時間が早ければ、ここから新穂高温泉まで下ることもできるが、すでに12時を回っているのでそれは厳しい。明るいうちに林道まで出られればヘッドライトだけで歩くのも問題ないが、下山ルートの途中で暗くなると危ない。


というのも、ヘッドライトで行動する場合下を見ながら歩くことになるので、石を真上から照らすようになり影がでないため立体感がつかみづらいのだ。距離感もいまひとつわかりにくく、つまづいたり浮石にのって転倒しやすい。上りの場合はルートの傾斜が上向きなので、少し先を見たりすればまだましだが、下りの場合は先に行くほど傾斜の関係でライトと地面との距離が登り道より開いていくので、光が弱くなり地面の状況がわかりにくいし、下りということでどうしても足元を見てしまいがちだ。周りが見えなくなるので道迷いも起こしやすい。


あえて危険を冒してまで急ぐ必要もないので、双六まで行って泊まる事にする。三俣山荘は大混雑の状況らしい。お昼過ぎだというのに、宿泊申込者に布団1枚に2名となります、なんて言っている。スタッフは廊下や自炊場にどうやって布団をならべようかと相談している始末だ。金曜日の夜だというのにずいぶん混雑しているなあと気になったが、雲ノ平山荘が新築中で使えないこともあるのだろう。


三俣山荘から巻道ルートで双六小屋をめざす。午後ということで双六小屋を越えてくる登山者の数は少なく、あまり人に出会うことはなかった。雪渓の残っている場所で単独行の女性とすれ違った。彼女はよほど雪渓が怖かったらしく、わざわざ雪渓をのない岩だらけのところを渡ろうとしていた。


そのおっかなびっくりの様子がおかしかったが、雪渓は小さな谷を埋めているのでそのまま雪渓上を歩けば何の苦労もなく渡れるのだ。三俣山荘に到着する時間を考えると双六直登ルートやトラバースルートは選択の余地がなく、巻き道ルートしかなかったのだろう。しかし、入口には「雪渓があり危険なのでアイゼンが必要です」などとかかれており、雪渓を目の前にしてすっかりびびってしまったらしい。岩にへばりついてどうやってすれ違おうかと悩んでいる様子の彼女を尻目に、普通の登山道のごとく雪渓を歩き始めた私を呆然と見つめる彼女がおかしかった。もっとも、雪渓上が本来のルートなのだけれど。


巻道ルートが他の2本のルートと合流するところまで来ると、小屋のほうからツアー客らしき団体が登ってきた。先頭はガイドとおぼしき男性で、そのあとに合羽をはおって荷物を持たない年配の男女が10名ほど続いている。上りで暑かったらしく合羽の上着のファスナーは空けており、下はシャツだけだ。小屋に早く着いたので、荷物を置いて双六岳へのツアーにでも行くのだろう。そうはいってもすでに午後2時を回っている。登って帰って来れば5時近くになりそうだ。


双六岳の頂上はガスの中で展望もきかない。わざわざ登る意味があるのだろうか。来たからにはひとつでも多くの頂上を踏まないともったいない、という人が多いのかもしれない。頂上で天気が急変し昨日の様な暴風雨にでもなったら、防寒着を持たない彼らはたちどころに真冬の季節に薄着で放りだされるようなものだ。頂上から小屋まで1時間程度なので、北海道トムラウシ山のようになることはないだろうが、ツアー登山の参加者はやっぱりどこか危機感がないように感じた。もっとも、ガイドが荷物は不要だと言ったのだろう。


双六池キャンプ指定地
双六山荘に着いて、小屋に泊まるかテントにするか少し迷ったが、昨日の暴風雨が低気圧の通過によるものなら、すでに東に抜けているだろうからさらに荒れる可能性はすくないだろうと考え、テントにすることにした。


テント場は入山時より混雑していて、すでに多くのテントがたっていた。広いテント場をうろうろしてやっとよさそうな場所が決まった。テントを張り終えると、まずは排水溝掘りだ。もう浸水はごめんこうむりたい。幸いここは土の地面なので溝を掘るのは楽チンだ。しっかりと溝を掘り終えたら、濡れた服をロープにぶら下げて乾かす。曇り空だし夕方近くだし、乾きそうもないことはわかっているが、それでも気休めに乾かしておきたいのだ。


●7日目(7月31日) 双六~鏡平~新穂高温泉
 夜半にいっとき強く雨が降ったが、長くは続かなかった。朝はやっぱり霧の中だったが、雨がふっていないだけで万々歳だ。そそくさと準備をすませて、6時に出発。他の登山者と出発時間がかぶるため、新穂高温泉に向かうルートは人が多い。前後を人に挟まれて歩くのは、後ろから追い上げられたり前に詰まったりしてペース配分が自由にできないので好きではない。


人が途切れるまで少し待つが、やっと後ろが来なくなったと思って出発したら、先に行った登山者が道端で写真を撮っている。結局、前後を挟まれた一番苦手なパターンで歩く羽目になった。幸い、出発直後の平坦な場所ではおしゃべりしながら追い上げてきた後ろの団体は、登りになると急にペースが落ちて離れていったし、前を行く団体も稜線上のベンチで休憩をとったので、30分ほどでいつものきままな単独行で歩くことができるようになった。


鏡平に着いたのは8時ごろ。まだ鏡平小屋の宿泊客が出きっていない時間だ。合羽を脱ぐかどうか迷ったが、雲の様子はあいかわらず重々しいので、そのままで行くことにした。


鏡平を出発して10分もしないうちに雨がぽつぽつと降り始めた。合羽を着たままにして正解だった。すれ違う登山者は合羽を着ていない人が多く、上は降ってますかと何度か聞かれた。現状はわかりようもないので1時間前は降っていなかったと答えておいた。


次第に雨が本降りになってきたが、すれ違う登山者は、あいかわらず合羽の着用率が低い。この登り坂では、合羽なんて暑くて着ていられないのだろう。濡れるのは自分の判断なのでかまわないが、狭い登山道を傘を差してあがってくる人が何人もいるのにはまいった。すれ違うときに目線に傘の先が来るので危ないし、本人の安全のためにもよくない。山に傘を持ってくることはいいのだが、使うのは宿泊地での散策やトイレや水場に行くときぐらいにしてもらいたいものだ。


林道まで下りてくる頃には雨もあがった。寒いぐらいの山頂付近から比べると、かなり暑い。入山時はやっぱり山は涼しいなんて思っていたわけだから、人間の感覚はいいかげんなものだ。わさび平小屋で休憩をとり、合羽を脱ぐ。


わさび平の果物
水を張った木船にぷかぷかと浮かぶりんごやバナナ、トマトのおいしそうなこと。


でも現地価格で高いので、下山してから栃尾のJAスーパーで買うことにして、日が差してきた林道を再び新穂高温泉目指して歩き始め、12時30分頃登山情報センターに到着した。バス停の脇にあった無料の温泉は取り壊されて跡形もない。下山届けを提出して車に戻る。さっさと着替えて近くの温泉へと向かう。駐車場から2分ほどのところに日帰り温泉の「飛岳の湯」というのがあり、ときどき利用している。洗い場が少ないのが玉に瑕だが、大きな露天風呂が気持ちいい。1週間ぶりのお風呂は最高だ。少し先に無料の露天風呂があるが洗い場がないので、下山後はちゃんとしたお風呂のほうがありがたい。きれいさっぱり気持ちも体もリフレッシュしたら、やっと旅の終わりを実感した。 

おしまい。

雲ノ平で撮影した写真は、風景写真ギャラリー「Studio Photon」で公開中。右側のリンクからどうぞ。

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| 2010年7月 雲ノ平 | 21:21 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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