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ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。相互リンクはしていませんので、リンクはご自由にどうぞ。

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2010年7月雲ノ平で過ごす夏 vol 3

●3日目(7月27日) 雲ノ平

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朝起きるとどんよりとした空。テント場の上にそびえる祖父岳はガスの中だ。うーん、またですか。という感じだ。毎度毎度のことながらスカッと晴れる日が少ない。雨が降っていないだけましと思って軽く食事を済ませ、6時ごろテントを出た。今日は、昨日までの疲れを癒す目的もあって、1日雲ノ平をゆっくりと撮影して回る予定だ。ひとまず、山頂部にアルプス庭園のある祖母岳に向かう。

 新築中の雲ノ平山荘を通り過ぎ、祖母岳へと分岐する木道を登り始めるとすぐに、大きな雪渓が木道を飲み込んでいた。いままで何度も雲ノ平に来たが、ここに雪渓が残っているのを見たのは初めてだ。空も大地もどんよりとして、コバイケイソウがちらほら咲いている程度で色気もなし。



 祖母岳頂上に広がるアルプス庭園でも、状況は同じ。正面に見えるはずの黒部五郎岳もガスの中。高山植物の花が咲き乱れる様を期待していたのだが、やはりまだ早かったようだ。わざわざ7月下旬まで時期を遅らせたのに、今年はどういうわけだろう。まったく、予想通りにならないのが登山だ。



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 しかし、15分ほど粘っているとたまに日が差し始めた。もう少しすれば晴れそうなので、頂上にあるベンチで時間をつぶす。しばらくすると黒部五郎がやっと顔を出した。日差しもそこそこ強くなってきた。アルプス庭園の名前の通り、広がる草原の向こうに黒部五郎の姿を入れて撮影してみるも、べたな順光で面白みがない。あきらめて逆光で雲間から差し込む光を活かした水晶岳方向の写真を撮ってみるも、こちらもいまひとつ。空の明るさに対して地面が暗い。


本来ならハーフNDフィルターで空の輝度を抑えて地面との差をつめて撮影するべきところだが、あいにくそこまで気が回らなかった。人間の目は優秀なので、見た目にはそれほど輝度差があるようには感じないのだ。空の白飛びに注意して撮影しておけば、レタッチで救えるだろうという甘い考えもあった。しかし、RAWで撮影したからといって、いつも救えるとは限らない。今回はその悪い例となってしまった。


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 祖母岳で1時間ほど撮影して雲ノ平山荘前まで戻ってくると、木道近くの草地から聞き覚えのある「クークー」という鳴き声。雷鳥の母子だと思って声のするほうを良く見ると、いたいた。母鳥が岩の上に上って周囲を警戒している。雛たちはてんでばらばらに歩き回りながら朝ごはんを探している。雲ノ平で雷鳥に遇うのは初めてで、じつは山荘の周囲にはいないものだと思っていた。8回目の訪問でやっと出会えたので、なんだか妙にうれしい。


その後、テントに戻る途中に先ほど母子に会った場所から100mほどのところで、今度はオス鳥に遭遇。なぜか木道から5m程度の草地にうずくまっていた。少し近づいて写真を撮っていると、機嫌が悪かったのか「くわぁ」と威嚇! やっぱりオスのほうが気性が荒いらしい。怒らせると悪いのでそそくさと退散した。


雲ノ平テント場からみる黒部五郎岳
 朝食が簡単なものだったので、テントに戻ってちゃんとした食事をとることにした。ちゃんとしたといっても「うどん」だけれど。食後、天気も良くないし眠気が出てきたので、お昼前のお昼寝。昼ごろ目が覚めて外へ出てみると、雲はすこし減っていた。テント場の周囲にはコバイケイソウが咲き始めており、その向こうに黒部五郎岳が見え始めていたので、山を背景にコバイケイソウの写真を撮っていると、近くのテントから年配の男性がカメラを持って出てきた。手にしていたのはニコンの一眼レフ。「やっぱり黒部五郎がいいですか?」なんて聞かれて、意味がよくわからず「そうですね」とあいまいに答えて撮影を続行。縦横、寄り引きと何パターンか撮ったところで撮影をやめると、再びその男性が話しかけてきた。


話のきっかけが何だったのか忘れたが、話しているうちに、もう少し天気がよければコバイケイソウの背景に黒部五郎岳を入れて撮ればいい構図になりそうだなんていうので、このひと案外写真に詳しいようだと気がついた。聞けば、高山植物と山の風景の写真を撮るのが好きで、よくカメラを持って山に登っているとのこと。仙台に住んでいるとかで、雲ノ平は今回が初めてだった。折立から単独テント泊で来て、このあとは三俣から黒部五郎岳に行き、再び折立に戻るらしい。山を背景に高山植物の写真を撮りたいので、ピークハントはあまり興味がないという。自分の考え方と同じ人もいるんだと、珍しく仲間を見つけたような気になった。


雲ノ平テント場からみる祖父岳
 頂上を目指さない登山なんて、と言われそうなのであまり公にしたことはないが、自分のスタイルもまさにそれ。登ってしまうと、見下ろした遠景写真しか撮れないので、あまり興味がわかない。もちろん、登り始めた頃は登頂と縦走が目的だったが、だんだん写真が目的になると登頂と縦走には興味がなくなってきた。というよりも写真を撮ろうとするとそんな時間もないし、山を被写体にするには登ってしまうと意味がないのだ。


とはいえ、山岳写真家を気取るつもりもない。撮りたいのは山そのものではなく、山がある自然の風景とそこに生きる動植物だ。実際、なんども雲ノ平に来ているのに、いまだに薬師岳も水晶岳も黒部五郎岳も登っていない。鷲羽岳には昨年やっと登ったばかり。ピークハントからピークウォッチに興味が移ったのは、雲ノ平を訪れてからだ。黒部源流部にあるこの溶岩台地は、周辺を名だたる名山に囲まれた、特別の展望台のようなところだ。場所によっては立山や槍も見える。標高2500m程度の高さでこんな贅沢な場所はめったにない。なだらかな起伏の続く雲ノ平は、雨が降ると池塘も多く出現する。彼方の名山や流れる雲、抜けるような青空をその水面に映しこんだ光景は別世界だ。そんなわけで、ちょっと意気投合してしまって、しばらく話し込んでしまった。


ハクサンイチゲと水晶岳
14時ごろから再び撮影に出かける。今度は水晶岳が眼前にそびえるスイス庭園に向かう。やはり花の数は少ないが、水晶岳を背景にハクサンイチゲの一群が咲いている場所があった。超広角レンズを使って水晶岳を背景に花のアップを撮影。


狙いは悪くなかったが、F11でパーンフォーカスになるだろうと横着をしてしまったので、水晶岳までピントが届かなかった。せめてF16まで絞り込んだものも撮っていたらと悔やまれる。フルサイズではなく、APS-Cセンサーの40Dで撮影したので、フルサイズより被写界深度は深くなるだろうなんて思ったのが敗因だ。どんな場合でも、絞りを変えて押えておく。これは鉄則だ。せっかく天気も良くなりつつあったのに、つまらない失敗をしてしまった。


●4日目(7月28日) 雲ノ平
雲ノ平の朝焼け
 この山行で唯一朝から快晴だった。朝5時前に起き、見上げると空には朝焼けが。



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西の空には丸い残月も浮かんでいる。薄闇にコバイケイソウの白い花が浮かびあがり、なかなか幻想的だ。すかさず写真を撮る。


朝日に輝くコバイケイソウ
今日は天気も良いので高天原まで日帰りで行ってこようと準備をし、6時前に出発。ところが、山荘の手前に広がるギリシア庭園のコバイケイソウの群落が朝日を浴びてやたらとキラキラだ。朝露が宝石のように輝いている。これを撮らずには行けないと、撮影しているとあっというまに30分が経過。


雷鳥の母鳥
急いで先に進むと、今度は山荘前で再び雷鳥の母子に遭遇。やっぱり撮らずにおれないということで、またまた30分のロス。


雷鳥の雛
高天原への分岐から山荘まえの丘にあがったときには8時を回っていた。丘の上にある大岩にのぼってみると、これまた快晴のいい眺め。しばし眺めを楽しみつつ、写真も撮って先を急ぐ。しかし、なんだか体が重い。丘を下って雨量計ロボットの設置されている小さな丘に再び登るルートがけっこうしんどい。どうも疲れがたまっているようだ。


雪渓と薬師岳
雨量計ロボットの丘を過ぎると奥スイス庭園だ。薬師岳が目の前に広がるところで、雪渓もあり、池塘もありでここも撮影ポイントがたくさん。


奥スイス庭園からの薬師岳
なんだかんだで気がつけば、もう9時前だ。高天原まで残り1時間半ほどだが、高天原での撮影時間と夢の平までの往復と撮影時間で、たっぷり2時間はかかる。露天風呂にのんびり浸かっていればこれまた1時間。ということは4時間半は必要で、高天原を出るのが13時30分だとしたら帰ってくるのに3時間半として、テント場着は17時になる。途中で写真なんてとっていたら6時を過ぎるかもしれない。暗くはなっていないが、ちょっとしんどそう。そもそもせっかく風呂に入っても、帰り道ののぼりでまた大汗をかくと意味がない。疲れも残ってそうだし、高天原はやめて雲ノ平散策第2弾にすることに。


P1010478_20120708025336.jpg
ひとまず山荘までもどる。祖母岳への分岐路を今度は薬師沢方面にとり、少し先にある奥日本庭園を目指すが、次第に雲行きが怪しくなる。雨という感じではないがやたらと大きな雲が空を覆うようになってきた。雲ノ平末端にあるアラスカ庭園まで行こうと思っていたが、あまり天気に期待が持てなくなったので中止。


池塘と水晶岳
木道脇のチングルマなどを撮影しつつ、もう一度祖母岳に登り返してみる。雪渓の手前までくると、昨日よりもコバイケイソウの花が増えていて良い感じだ。時折日差しがさすと夏の高原らしいさわやかな光景となる。ここがこんなに気持ちのいい場所だったとは、なぜいままで気がつかなかったのか。ちょっとした日差しと草花の変化で雰囲気がらっと変わるのだから、山って不思議な場所だ。


日差しを待ちつつあちこち撮影しながら山荘までもどってくると、いつの間にか15時に近くなり、雲もだいぶ増えてきた。なんとなく雨の雰囲気が濃くなってきたので、テントへ引き上げ、持ってきた小説を読んですごす。夜になると雨が降り始めたが、まだたいした降りではなかったので、明日には止むだろうと思って眠りに着いた。


 夜半、強烈な雨音に目が覚めると、雨だけでなく風もかなり強くなっていた。時折テントが大きく揺らぐ。念のためテント前室に水が流れ込んでいないか確認したが、事前に作っておいた排水溝が一応役に立っているようで、無事だった。


安心して再び眠りに着いたが、明け方目が覚めたとき愕然とした。枕元で水の音がする。ライトをつけてみるとなんと床上浸水だ。幸い、枕元右側にあるテントコーナー付近に水がたまっていただけだった。しかし、枕の下にあった明日着る予定の服が水びたしだ。図書館から借りてきた小説も一部水に使ってぐっしょり。他には被害がなかったのは不幸中の幸いだが、これにはかなりへこんだ。


ちょうど水がたまっていた部分のテントの角は、実はちょっとしたほころびがあって小さな穴があった。テントの下部は防水生地なので本来浸水はしないのだが、この穴から水が入ってきたのだ。しかも、水が入ってきただけあって、そのあたりのテントの下は水溜りになっていて、触るとタプタプする。外は相変わらずの暴風雨でどうすることもできない。あきらめて濡れた衣服をテント前室に移し、雨があがるのを待ちながら水溜りを避けてシュラフにもぐりこんだ。


しばらくすると雨脚が弱まってきたので、トイレに行ったついでに水のたまったところを確認した。斜面の上のほうから水が流れてきてちょうど浸水したあたりに水溜りを作っていた。上から流れてくる水の流れをテントの下に直接来ないように溝を作り、水溜りになっていたところは排水路をつくった。さらに穴の開いていたテントの角部分には石を敷いて水溜りから浮かせた。テント内の水をタオルでふき取ってなんとか床上浸水を解決してから、再び眠りに着いた。


vol 4へ続く



雲ノ平で撮影した写真は、風景写真ギャラリー「Studio Photon」で公開中。右側のリンクからどうぞ。


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| 2010年7月 雲ノ平 | 00:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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