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ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。相互リンクはしていませんので、リンクはご自由にどうぞ。

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気力体力を試される極寒のロングコース: 塩見岳 その6 

2018年12月31日(月)~2019年1月2日(水) 
長野県大鹿村 塩見岳(標高3047.3m) テント・避難小屋泊単独行 


6、1月1日 塩見岳アタック 後編
塩見小屋のすぐ横で立ったまま休憩を取りながら、塩見岳山頂まで行けるかどうかを考えました。


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天気は問題なしです。雲ひとつない晴天の空は、荒天になる可能性はまずないと思われます。山頂アタックの条件としては、これ以上ないというほど好条件です。


とはいえ、さすがに森林限界を超えているので風が強くなりつつあり、ここから先はさらにきつくなると思われます。アウターグローブのない左手は凍傷にならずに戻ってこられるのかという不安を拭い去ることはできません。気温はおそらくマイナス5度ぐらいで、風速は10m/秒以下だと思うのでそれほど心配する必要はなさそうですが、バックアップが何もないというのが気がかりです。標高が300mあがれば、一気に風速が強まることも考えられるので、10m/秒を超えてくると体感温度は一気にマイナス15度の世界です。さすがに、インナーグローブだけで乗り切れるとは思えません。


体力的にはどうでしょうか。ここまであがってくるのにそこそこしんどい思いをしています。これから標高差300mを登って降りるのにどれほどの体力を使うのか、こればかりは行ってみないとなんともいえませんが、無事に塩見小屋まで戻ってこられたとしても、疲労の蓄積はかなりのレベルに達していることでしょう。そこからさらに4時間近く歩かなけらばならず、しかも日没に向かって気温はどんどん下がり続けるわけで、冷たい西風にさらされる稜線歩きでの消耗も考慮しなければなりません。登ってくるときでさえ、けっこう寒いと感じたわけですから、それ以上に寒いと感じるわけです。しかし、防寒用のダウンジャケットは、バックパックの中には入っていないのです。


行程のスケジュールを考えてみると、塩見小屋から塩見岳山頂までは夏季のコースタイムで約1時間です。冬季は山頂直下が雪と氷と岩のミックスで、しかも一部かなり急傾斜の雪壁も越えなければならないようで、手前の天狗岩南斜面をトラバースすることも含めると、あまり雪は深くないものの夏季よりも余計に時間がかかると考えておいたほうがよさそうです。


すでに11時を回っているので、11時15分に出発したとして、登頂が12時30分。東峰への往復と休憩で20分使ったら下山開始が12時50分。塩見小屋まで1時間かかるとして、小屋を14時に出発したら、三伏峠まで往路と同じ時間で戻れたとして17時40分。疲労によるマイナスを考慮すれば18時帰着ということになります。三伏山の登り返しぐらいからはヘッドライトが必要になってくるでしょう。順調に行って18時帰着ですから、何かあればたちまち夜間行動を強いられます。ビバークツェルトはありますが、防寒着がないのでビバークは現実的ではありません。是が非でも三伏峠にたどり着かなければいけないわけです。



プラス要因は、安定した好条件の天気と積雪の少なさ。登ること自体を阻害する要因はほぼないといえます。マイナス要因は、装備の不備(グローブ、防寒着)、疲労、復路の行動時間の長さと帰着時間の遅さ。言ってみれば、行きはよいよい帰りは怖いというわけです。


こんな好条件で、目の前にある山頂に登らずに帰るのか? 帰りは帰りでなんとかなるって! 塩見小屋までは明るいうちに帰ってこられるから、その後はトレースもはっきりしていて迷う心配はないし、歩いていれば多少寒くても大丈夫だ。そういう気持ちがあるのは確かです。


しかし、それを打ち消すかのように別の気持ちもわいてきます。遭難の多くは下山するときに発生しているんだぞ! 疲れきって体力も落ちているところにもってきて、防寒着もなしに日没後の稜線を風に吹かれながら何時間も歩き続けたら低体温症になるかもしれない。そうなったら歩くことができなくなって、それで最後だぞ? 膝痛などで大幅に帰着時間が遅れるかもしれないし、そうなればますます極寒の夜に行動する時間が増えて、低体温症になる危険が増加するばかりだ。あきらめて戻るのが賢明だ。


さ、どうする! ゆっくり考えている時間はありません。行くべきか、帰るべきか、決断を迫られます。逡巡した挙句、下した結論は、登頂断念でした。今回は、マイナス要因のほうが大きいし、マイナス要因を軽減する方策が皆無なのでリスクが高いという判断です。登頂すれば時間もかかるし疲労も増える、装備の不備についてはないものはないのでどうしようもないわけです。


標高2750m。今年の正月山行の最高到達点は、ここまでです。昨年登った八ヶ岳の硫黄岳とほぼ同じ高さですから、敗退とは言ってもよくがんばったということにしておきます。



ここで一息。ぽちっと押して休憩したら続きをどうぞ。




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下山する前に、周囲の風景をしっかりと確認しておきました。


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北に見える優美な山容の山は、南アルプスの女王仙丈ケ岳です。


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北東方向に見えるのは、左から間ノ岳、西農鳥岳、農鳥岳です。間ノ岳の左端に北岳の頭も少しのぞいているので、白峰三山が一望できたわけです。


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間ノ岳のアップ。


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西農鳥岳、農鳥岳のアップ。


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西方には、中央アルプスの峰峰が連なります。塩見岳山頂から見れば、もっとすばらしい展望が広がっていたのかもしれませんが、それは先のお楽しみにとっておきたいと思います。


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最後に、自撮りでおしまいです。


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11:15 下山します。


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本谷山から三伏山へと連なるはるかな稜線を、これからたどって戻ります。



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塩見小屋の直下は、そこそこの急斜面なので、慎重に下ります。


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権右衛門山と本谷山間の鞍部にあったテントはすでに撤収されていました。ここは、風が当たらず日当たりがいいので、近くで休憩することにしました。


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休憩場所から見上げる塩見岳は、圧倒的な存在感を放っていました。ちなみに、塩見小屋は左手にある台形のピークの向こう側です。


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本谷山への登り返しの途中で南方に見えたピークは、おそらく荒川岳(悪沢岳)でしょう。


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本谷山山頂近くから、塩見岳が眺められるポイントが何箇所かありました。それにしても、本谷山の登り返しはだらだらといつまでも続き、偽ピークもあって本当に疲れました。塩見岳に登頂してさらに疲労していたら、発狂していたのではないかといほどいやらしい尾根でした。


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もうすぐ山頂かなと思っていたら、樹林が途切れたその先にさらに高いピークが現れて、がっくりしました。



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13:18 ようやく本谷山まで戻ってきました。塩見小屋から2時間かかりました。本谷山山頂にあったテントも撤収されていて、幕営跡地で少し休憩してから、出発しました。


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出発間際に、塩見岳をもう一度記念撮影しておきました。


本谷山からだらだらと下っていくと、今度は三伏山が目の前に立ちふさがるように現れます。しかし、見た目には普通の山のように見えても、本谷山と同様に三伏山も山頂はずっと先の尾根の向こうにあり、ここでも行けども行けども山頂が見えない苛々と戦いながら歩き続けました。


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ようやく山頂らしき場所までたどり着き、ここで終わりかと思って歩を進めていくと、なんと左手奥にまだ別のピークが見えるではないですか。偽ピークにすっかりだまされました。精神的にダメージを食らった感じです。


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14:42 冷たい西風を浴びながら稜線を歩き、ようやく三伏山にたどり着きました。三伏山への登り返しでは、けっこう西風にされされることが多く、バラクラバをしていても後頭部や側頭部が冷えてくるし、ハードシェルジャケットを通して冷気がしみてくるので、寒さと戦いながら歩き続けました。まだ日があるというのにこの寒さですから、日没後だと相当消耗することになっただろうなと思うと、やはり登頂をあきらめて戻ってきたのは正解だったのかもしれません。


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三伏山から南には、小河内岳とその背後に南アルプスの高峰群が連なっているのがみえました。星景写真を撮るのにいい場所なので、今晩余力があって天気がよければカメラを持って撮影に来てみることにしました。


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14:52 かなり疲れましたが、なんとか15時前に三伏峠に戻ってくることができました。奥にあったテントはすでになく、自分のテントともう一幕あるだけです。すっかり日も翳って寒々としたテントに戻ってみると、昼間のうちに陽が当たっていたようで、テント内側の結露はすっかりなくなってテントも外張りもきれいに乾いた状態でした。これなら、テントを撤収して避難小屋に泊まったほうが、明日結露で凍結したテントを撤収するよりもずっと楽だし、濡れていない分少しでも軽くなるなと考え、避難小屋に移動することにしました。


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とりあえず、マットだけ持って避難小屋に行ってみると、誰もいません。一番奥にマットを敷いて場所を確保したら、テント内にあるものをバックパックに放り込んで避難小屋にもって行き、最後にテントをたたんで丸めたまま避難小屋に戻りました。撤収までおそらく10分もかかっていないと思います。


誰もいない避難小屋を広々と使ってテントと外張りをたたみ、荷物も整理がひととおりできたところで、水作りです。再びビニール袋に雪を詰め込んで小屋に戻り、あとはひたすらバーナーで溶かしていくだけです。ちなみに、避難小屋に入ったときの室温は、マイナス7度でした。ほぼ外気温と同じでしょうから、夕方でこの温度だと、今夜もマイナス10度コースだったと思われます。避難小屋のほうがすこしは暖かいでしょうから、撤収して正解でした。


その後、この日に入山してきた単独行の男性が2人来て、この日は3名の相部屋となりました。それぞれ栃木と神奈川からだったと思いますが、いろいろと話をしながら食事を終えて、20時ごろに寝袋にもぐりました。


日が暮れてから雪が降り始め、三伏山に撮影に行くのは中止しました。あれほどきれいに晴れ渡っていたのに、雪が降るとは思いもしませんでした。もしも登頂していて、帰り道で膝痛がでて帰着時間が遅れていたら、途中で雪に遭遇していたかもしれないわけで、やはり明るいうちに行動を終えるというのは山の鉄則だと改めて思いました。


避難小屋は人数が増えて、食事や水作りでバーナーも使ったおかげで、室温はマイナス3度ぐらいまで上がり、暖かく眠ることができました。夜中にカイロを入れていた象足が暑すぎて寝袋の中でソックスだけになりましたが、足が冷えることもなく朝まで温かく眠ることができました。

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つづく。

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| 2018年12月 塩見岳 | 18:45 | comments:0 | trackbacks(-) | TOP↑

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