晴天5泊6日の山旅: 雲ノ平と黒部源流その2

8月12日
午前3時に起床し、4時30分に出発。なぜそんなに早いのかというと、双六岳の長大な台地の先に聳える朝の槍ヶ岳をカメラに収めたかったからです。いままで何度も双六岳の下を通過しているというのに、頂上にたったのは一度きり。しかもガスっていたため台地越しの槍ヶ岳は見ていないのです。この晴天の日に行かなかったらいつ行くの? やっぱ、今でしょう! というわけです。とはいえ、双六から見る朝の槍ヶ岳は逆光になるので、実はシルエット気味になっていまいちなのです。本当は夕方のほうがいいのですが、このさい朝もおさえておこうというわけです。

双六山荘裏の急斜面をえっちらおっちら登っている途中で、夜が明けてきました。

巻き道分岐についたのはちょうど午前5時。「熊注意」の看板に、昨晩のことが思い起こされます。”やっぱり熊だったのかも”なんて想像してしまうと、ちょっと背筋に寒いものが・・・

巻き道分岐からは樅沢岳の頭越しに槍の穂先がちょこんと見えます。

5:05 表銀座の稜線から朝日が顔を出しました。

そのまま一気に双六台地へ行こうと思っていたら、双六岳登山道入口あたりにコバイケイソウのお花畑が。背後には槍穂高の峰峰が鋭い稜線で空を切り取っているのが見えます。コバイケイソウは朝日に照らされて光っているように見えて美しい。これはやっぱり撮らずには行けない。ということで、しばしの撮影タイムとなりました。

そうやって道草に時間をとられながらも、いよいよ双六台地への急登が始まります。

少し登ると、ハクサンイチゲなどの高山植物が花を咲かせていました。コバイケイソウもいいけれど、やっぱりこういう小ぶりなかわいい花のほうが高山植物っぽいかなと思います。

6:14 ようやく台地の端っこに出てきました。

笠ヶ岳がなんだか近くに見えます。

広い双六台地の上に伸びる一本のトレイル。

少し進んで振り返れば、市松模様の双六台地と槍穂高の稜線が織り成すコントラスが見事です。

荷物を下ろして三脚をすえつけて一眼レフで狙いを定めるも、どういうわけかトレイルの途中で立ち止まっていつまでも記念写真の撮影に興じる者や、同じように立ち止まって山の同定をはじめる者などがいていつまでたってもシャッターを切れません。なんでそんなところで止まるんだとイライラするも、それはこっちの勝手な都合なので、ただ彼らが動いて画角から外れてくれるのを待つしかありません。隣で同じように写真を撮ろうと待っている年配の単独行男性もイライラしているようで、お互いに「なんなんでしょうねえ」などと愚痴をこぼしつつ待つこと数分。隣の男性は我慢しきれなくなったらしく、早く進んでくださいとお願いに行っちゃいました。

そんなこんなでかれこれ40分ばかり時間を費やして撮影したものの、やっぱり逆光気味で結果はいまひとつ。見切りをつけて双六岳山頂を目指します。

7:57 双六岳登頂。ここに初登頂したのは、初めて雲ノ平に入った2003年9月。それ以後、小池新道を5回通過するも、すべて巻き道経由で双六岳には立ち寄っていません。なんと10年ぶりの登頂になるわけですが、いつの間にかそんなに時間が経っていたなんて驚きです。
天気もいいし、お腹もすいたので、山頂でしばらく食事休憩です。

北側には鷲羽岳や水晶岳が頂を連ね、

東側には槍ヶ岳、

南側には笠ヶ岳、

西、というより北西には黒部五郎岳が大きなカールを広げています。

その右手奥には薬師岳の姿も。北アルプスの名峰が勢ぞろいです。双六岳がこんなに眺めのいい山だったとは、いまさらながら知りました。
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8:21 休憩を終えて出発です。フル装備で双六岳から三俣蓮華岳までの稜線を歩くのはけっこうきつそうですが、上がってきたものは仕方がありません。

9:09 双六岳と三俣蓮華岳の間にある丸山の登りです。ここがこのルートで一番きついところ。空気も薄いので息が上がりますが、無理をしないでゆっくりと進みます。

9:33 あまりのつらさに途中休憩を入れて、ようやく山頂に出ました。この山は台地状にフラットな山頂になっているので、山頂に出てからはしばらく平坦な道が続きます。

山頂台地の突端まで来ました。ここから少し下って、あとは三俣蓮華岳へのゆるい稜線を登り返すだけです。しかし、あまりにも雄大な景色なので、岩の上に座ってしばらくその風景を堪能しました。

10:18 ヒーコラいいながらようやく三俣蓮華岳山頂に着きました。もうしばらくは動かないぞと、荷物を下ろしてどっかりと座り込みます。が、山頂近くに座ってしまったので、次々に登山者がやってきて、記念写真を撮ろうとし始めます。これは、絶対にシャッター係を頼まれてしまうと思って、早々に逃げ出しました。

カメラを持って山頂をぶらぶらしていると、朝のうちシルエットだった槍ヶ岳に日が当たるようになっていました。

眼下には巻き道がうねうねと伸びています。

こちらはもうひとつの山頂。先ほどの黄色いのが長野県のもので、こちらはおそらく岐阜県のものではないかと思われます。岐阜県の最高峰 笠ヶ岳のとんがりがはっきりと見えています。

ぐるっと回って鷲羽岳を正面に見るところに来ると、三俣山荘とテント場が見えました。まだ午前中だというのに、テント場はけっこう埋まっているようです。今日の予定は黒部五郎のテント場でしたが、考えてみれば明日の午後には再びフル装備で三俣蓮華岳を登り返して三俣蓮華のテント場まで行かなければなりません。黒部五郎岳のカールを見に行くだけなら、なにもフル装備でうろうろしなくても、三俣蓮華のテント場にテントを張って、明日朝早くに出発すれば問題なく日帰りできます。雲ノ平に二泊する予定を1泊に変更し、三俣で2泊すればいいわけで、そのほうが体も楽なはず。そういうわけで目標変更。三俣蓮華のテント場へ向けて出発です。

11:16 三俣峠まで降りてきました。あとは、テント場までひたすら下ります。

お昼前にテント場に着きましたが、上から見ていたとおり小屋に近い場所はすでにたくさんのテントが林立しています。それでも、登山道沿いで川沿いの一角に何とかシングルのテントがはれるぐらいのスペースを見つけて、今日と明日の寝床を確保です。あとは夕方までのんびりと本でも読んで過ごしましょう。

夕方になって太陽が傾くと、槍ヶ岳に当たる光の角度が変わってコントラストが強くなり、槍ヶ岳の立体感が強まります。しかし、この日は雲ひとつ無い快晴だったので、これといってドラマチックな光景には出会えませんでした。

気がつけば、テント場の上のほうまでテントが所狭しと並んでいます。いままでこんなにテントが張られているのを見たことがありません。やはりお盆休みは大変です。小屋のほうも布団一枚に2~3人という状態らしいので、テント場も山小屋も大混在のようです。
この日の夜は、明日の朝が早いということもあり、星景写真の撮影はなしでさっさと寝ました。ところで、初日の夜もそうだったのですが、夜になるとけっこう寒くて寝られない状態になっていました。というのも、昨年購入した夏用寝袋イスカ チロルが思ったよりも保温性能がなくて、そのうえダウンジャケットは持ってきたもののダウンパンツは持ってこなかったので、上半身よりも下半身が冷えてたびたび目が覚めたのでした。夏とはいえ、2500mの稜線では上下の防寒着は必須ですねえ。いままでは3シーズン用寝袋だったから気にならなかったようです。夏用寝袋の場合は、暖かく寝るためにはダウンの上下とウールの長袖シャツか薄手のフリースがあったほうがいいようです。
つづく。
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| 2013年8月 雲ノ平と黒部源流 | 19:20 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑