再び雪の石鎚へ ~ 今度はテント泊: 石鎚山その2
2013年2月23日~24日 愛媛県西条市 石鎚山(標高1982m) 単独テント泊山行
日の出の時間は概ね午前7時ごろ。朝6時30分に山頂に着くということで逆算すると、午前5時には出発する必要がああります。朝食、お湯の沸かしなおしなどで2時間かかるとして、時計のアラームは午前3時にセットしました。ちなみに、夕食後に外の様子を見てみたところ、ガスで星空は見えなかったので、星景写真の撮影は中止です。
前述のとおり、なかなか寒さで寝付けなかったのですが、南アルプスのときと同じくシルクのインナーシーツを寝袋の中に入れると寒さがおさまり、眠りにつくことができました。
目が覚めたのは午前2時を回った頃でした。前日は2時間しか行動していなかったので疲れもなく、わりとすっきりと目が覚めました。3時までまだ時間があるしもう一眠りしようと思っていましたが、なんだかわけもなく時間がかかってしまった正月の仙丈ケ岳山行を思い出して、2時30分には寝袋を出ました。
食事を済ませ、荷物を片付けて準備万端整ったところで時計を見ると、なんと5時前。30分早起きしたのが幸いしました。やっぱり冬は知らない間に時間が経ってしまいます。
4:58 一晩お世話になった、前社が森の小屋に別れを告げて出発です。写真はなぜかピンボケでした。
5:19 夜明峠です。
真っ暗で、風があり、ときおりゴーゴーとものすごい音で周囲の木々がざわめきます。冷静に考えれば、真っ暗な山の中にたった一人でいるのですからかなり恐ろしい状況ですが、不思議となんとも感じません。強風で消えかけたトレースを探しながら先へ進みます。
夜明峠から先は足跡が風で運ばれた雪で埋め尽くされており、わずかな痕跡だけの状態でした。
5:55 気がつけば目の前に二の鎖下の鳥居がありました。標高が上がったためか、ガスが出始め、風も少し強まってきました。鳥居の上のほうにライトの明かりが2つほど見えています。こんな時間に下りてくる人がいるなんてどういうことだろうといぶかしく思いながら登って行くと、明かりのともるテントが一張りあり、中に人がいるのがわかりました。後でわかったことですが、なんと斜面に雪洞を掘って泊まっているパーティーがいて、テントは食事用に張ってあったものでした。
二の鎖下から先は、いよいよ核心部です。急斜面のトラバースと、雪に半分埋もれた鉄階段をたどります。出だしの急斜面のトラバース部分は、すでに雪に埋まっており、ラッセルが必要な状態でした。そのうえ、硬い雪の上にさらさらの新雪が30cmほど積もった状態で、表面の3cmほどだけ半分クラストしたような状態です。足を乗せるとずぶりと沈み込むのですが、その時斜面下側の雪の表面が30cm角ぐらいの板状に割れて、下の柔らかい雪と一緒にズリ~と流れていくのです。踏み出した足に体重をかけると、そのまま雪と一緒にずるずると斜面下へわずかに滑るので、かなり慎重に歩かざるを得ません。これが大きな斜面だったら雪崩そうな雰囲気です。今は気温が低いので大丈夫そうですが、気温が上がるとちょっと怖い斜面です。帰りは早めに降りたほうがよさそうだなと思いながら通過しました。
鉄階段は、昨年同様半分は雪に埋もれています。場所によってはすべて埋もれているところもありました。
階段のところはあまり問題はないのですが、とにかく急斜面のトラバースに時間がかかります。三の鎖下につく頃には、回りは明るくなっていました。
山頂直下の階段は、完全に雪に埋まっており、そのうえ凍結してカチカチになっています。かろうじて踏み跡が残っていたので、慎重に踏み跡をたどって凍結した斜面をトラバースしました。
6:53 予定より少し遅れてしまいましたが、なんとか7時前に山頂にたどり着きました。しかし、山頂は完全にガスの中です。天狗岳のシルエットすらみえません。もちろん、夜明けの色も、太陽の姿も何も見えません。気がつけば、右足の指先だけがギンギンに冷えて痛みがあります。左足のほうはちょっと紐が緩く感じていたのですが、そのことがかえって血流を妨げずによかったようです。
ドアが開け放しになっていた避難小屋に入って靴紐を緩めて、撮影の準備をして外に出ました。
天狗岳を望む神社の前には、体格のいい男性が一人カメラを三脚に乗せてシャッターチャンスをまっていました。昨晩から避難小屋に泊まりこんでいたようです。「ガスが晴れると良いですね」と少し言葉を交わして、僕も彼の少し上でカメラを三脚にセットしました。温度計は-9度をさしています。風はかなりの強さで拭いています。おそらく風速10m毎秒ぐらいあるでしょう。ソフトシェルの上にダウンジャケットを着て、その上からハードシェルを着ていますが、じっとしているとやはり冷えます。小刻みに体を動かしながらガスが晴れるのを待ちましたが、なかなか晴れてくれません。
約1時間が経過した頃、ようやくガスが途切れ始めました。瞬間的ですが、ときどき太陽がその姿をぼんやりと見せるようになって来ました。
ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。
そして、待ちに待った天狗岳のシルエットも見え隠れするようになって来ました。
ガスの中から太陽と共に姿を見せ始めた天狗岳は、やっぱり神秘的です。
突然ガスが薄くなって、天狗岳がその姿を現しました。目の高さを猛烈なスピードでガスが流れ飛んでいくのを見ていると、まるで空を飛んでいるかのような錯覚を覚えます。
岩壁を身をよじるように這い上がり、頂を飲み込むように流れてゆくガスは、まるで生き物のようです。
9:10 ガスが飛び去り、朝のドラマチックな時間がおわりました。風は相変わらず強いのですが、天狗岳は落ち着いた表情に変わりました。
日差しが降り注ぐようになり、風の当たらない避難小屋前にいると気温の低さを忘れるほどです。
西ノ冠岳と二の森もはっきり見えるようになりました。
9:45 避難小屋の中で軽く朝食をすませると、下山することにしました。
三の鎖下から黒いドームのような天狗岳が見えました。
1920.5mの無名の三角点峰に日差しがさしています。
二の鎖下まで戻ってきました。アックスからストックに装備を変更して休憩無しで下山します。
夜明峠を過ぎたところから振り返ると、石鎚山の上にのしかかっていた雲の塊が徐々に千切れ飛んでいっているのが見えました。この調子ならすっきり晴れるかもしれません。
10:55 前社が森に着きましたが、小屋の中や前に休憩中の登山者が数名いて場所がなかったので、休憩はなしで通過します。
昨年美しい霧氷の花を咲かせていたブナの巨木も、今日はすっかり地味な冬枯れの姿です。
11:31 八丁まで下りてきました。さすがに疲れが出たので休憩することにしました。クランポンをはずし、足元もすっきりして、ここからの登り返しに備えます。
疲れた体にこたえる登り返しは、延々と続くようでげんなりしてきます。
12:17 長い長い坂道が終わり、やっと成就社まで戻ってきました。
今回、山中で1泊させていただき、また暗く寒い中無事登頂と撮影ができたので、成就社にお礼のお参りをしていくことにしました。
12:43 だらだらとした下りの坂道ですっかり足が痛くなってしまいましたが。ようやくロープウェイ駅に着きました。今度は雪がなくなった時期に、星景写真狙いで訪れたいと思います。
■山行データ
<1日目往路所要時間> 1時間52分(休憩時間を含む)
山頂成就駅15:32→成就社16:01→八丁16:21→前社が森17:24
<2日目往路所要時間> 1時間55分(休憩時間を含む)
前社が森4:58→夜明峠5:19→二の鎖下5:55→弥山山頂6:53
<復路所要時間> 2時間58分(休憩時間を含む)
弥山山頂9:45→二の鎖下10:18→前社が森10:55→八丁11:31→成就社12:17→山頂成就駅12:43
<登山道情報>
八丁から上の登りは雪が少ない急斜面なので滑りやすく、八丁でクランポンを装着しておいたほうが無難。前社が森の小屋裏トイレは使用可能。二の鎖下から山頂までは、急斜面や凍結した斜面のトラバースがあるため、ストックでの通過は危険。アックスに持ち替えてから入ること。また、ステップを切りながら登る必要があるところもあるので、前爪のない4本や6本のクランポンの場合は引き返したほうがいい。山頂のトイレは使用可能。
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日の出の時間は概ね午前7時ごろ。朝6時30分に山頂に着くということで逆算すると、午前5時には出発する必要がああります。朝食、お湯の沸かしなおしなどで2時間かかるとして、時計のアラームは午前3時にセットしました。ちなみに、夕食後に外の様子を見てみたところ、ガスで星空は見えなかったので、星景写真の撮影は中止です。
前述のとおり、なかなか寒さで寝付けなかったのですが、南アルプスのときと同じくシルクのインナーシーツを寝袋の中に入れると寒さがおさまり、眠りにつくことができました。
目が覚めたのは午前2時を回った頃でした。前日は2時間しか行動していなかったので疲れもなく、わりとすっきりと目が覚めました。3時までまだ時間があるしもう一眠りしようと思っていましたが、なんだかわけもなく時間がかかってしまった正月の仙丈ケ岳山行を思い出して、2時30分には寝袋を出ました。
食事を済ませ、荷物を片付けて準備万端整ったところで時計を見ると、なんと5時前。30分早起きしたのが幸いしました。やっぱり冬は知らない間に時間が経ってしまいます。
4:58 一晩お世話になった、前社が森の小屋に別れを告げて出発です。写真はなぜかピンボケでした。
5:19 夜明峠です。
真っ暗で、風があり、ときおりゴーゴーとものすごい音で周囲の木々がざわめきます。冷静に考えれば、真っ暗な山の中にたった一人でいるのですからかなり恐ろしい状況ですが、不思議となんとも感じません。強風で消えかけたトレースを探しながら先へ進みます。
夜明峠から先は足跡が風で運ばれた雪で埋め尽くされており、わずかな痕跡だけの状態でした。
5:55 気がつけば目の前に二の鎖下の鳥居がありました。標高が上がったためか、ガスが出始め、風も少し強まってきました。鳥居の上のほうにライトの明かりが2つほど見えています。こんな時間に下りてくる人がいるなんてどういうことだろうといぶかしく思いながら登って行くと、明かりのともるテントが一張りあり、中に人がいるのがわかりました。後でわかったことですが、なんと斜面に雪洞を掘って泊まっているパーティーがいて、テントは食事用に張ってあったものでした。
二の鎖下から先は、いよいよ核心部です。急斜面のトラバースと、雪に半分埋もれた鉄階段をたどります。出だしの急斜面のトラバース部分は、すでに雪に埋まっており、ラッセルが必要な状態でした。そのうえ、硬い雪の上にさらさらの新雪が30cmほど積もった状態で、表面の3cmほどだけ半分クラストしたような状態です。足を乗せるとずぶりと沈み込むのですが、その時斜面下側の雪の表面が30cm角ぐらいの板状に割れて、下の柔らかい雪と一緒にズリ~と流れていくのです。踏み出した足に体重をかけると、そのまま雪と一緒にずるずると斜面下へわずかに滑るので、かなり慎重に歩かざるを得ません。これが大きな斜面だったら雪崩そうな雰囲気です。今は気温が低いので大丈夫そうですが、気温が上がるとちょっと怖い斜面です。帰りは早めに降りたほうがよさそうだなと思いながら通過しました。
鉄階段は、昨年同様半分は雪に埋もれています。場所によってはすべて埋もれているところもありました。
階段のところはあまり問題はないのですが、とにかく急斜面のトラバースに時間がかかります。三の鎖下につく頃には、回りは明るくなっていました。
山頂直下の階段は、完全に雪に埋まっており、そのうえ凍結してカチカチになっています。かろうじて踏み跡が残っていたので、慎重に踏み跡をたどって凍結した斜面をトラバースしました。
6:53 予定より少し遅れてしまいましたが、なんとか7時前に山頂にたどり着きました。しかし、山頂は完全にガスの中です。天狗岳のシルエットすらみえません。もちろん、夜明けの色も、太陽の姿も何も見えません。気がつけば、右足の指先だけがギンギンに冷えて痛みがあります。左足のほうはちょっと紐が緩く感じていたのですが、そのことがかえって血流を妨げずによかったようです。
ドアが開け放しになっていた避難小屋に入って靴紐を緩めて、撮影の準備をして外に出ました。
天狗岳を望む神社の前には、体格のいい男性が一人カメラを三脚に乗せてシャッターチャンスをまっていました。昨晩から避難小屋に泊まりこんでいたようです。「ガスが晴れると良いですね」と少し言葉を交わして、僕も彼の少し上でカメラを三脚にセットしました。温度計は-9度をさしています。風はかなりの強さで拭いています。おそらく風速10m毎秒ぐらいあるでしょう。ソフトシェルの上にダウンジャケットを着て、その上からハードシェルを着ていますが、じっとしているとやはり冷えます。小刻みに体を動かしながらガスが晴れるのを待ちましたが、なかなか晴れてくれません。
約1時間が経過した頃、ようやくガスが途切れ始めました。瞬間的ですが、ときどき太陽がその姿をぼんやりと見せるようになって来ました。
ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。
そして、待ちに待った天狗岳のシルエットも見え隠れするようになって来ました。
ガスの中から太陽と共に姿を見せ始めた天狗岳は、やっぱり神秘的です。
突然ガスが薄くなって、天狗岳がその姿を現しました。目の高さを猛烈なスピードでガスが流れ飛んでいくのを見ていると、まるで空を飛んでいるかのような錯覚を覚えます。
岩壁を身をよじるように這い上がり、頂を飲み込むように流れてゆくガスは、まるで生き物のようです。
9:10 ガスが飛び去り、朝のドラマチックな時間がおわりました。風は相変わらず強いのですが、天狗岳は落ち着いた表情に変わりました。
日差しが降り注ぐようになり、風の当たらない避難小屋前にいると気温の低さを忘れるほどです。
西ノ冠岳と二の森もはっきり見えるようになりました。
9:45 避難小屋の中で軽く朝食をすませると、下山することにしました。
三の鎖下から黒いドームのような天狗岳が見えました。
1920.5mの無名の三角点峰に日差しがさしています。
二の鎖下まで戻ってきました。アックスからストックに装備を変更して休憩無しで下山します。
夜明峠を過ぎたところから振り返ると、石鎚山の上にのしかかっていた雲の塊が徐々に千切れ飛んでいっているのが見えました。この調子ならすっきり晴れるかもしれません。
10:55 前社が森に着きましたが、小屋の中や前に休憩中の登山者が数名いて場所がなかったので、休憩はなしで通過します。
昨年美しい霧氷の花を咲かせていたブナの巨木も、今日はすっかり地味な冬枯れの姿です。
11:31 八丁まで下りてきました。さすがに疲れが出たので休憩することにしました。クランポンをはずし、足元もすっきりして、ここからの登り返しに備えます。
疲れた体にこたえる登り返しは、延々と続くようでげんなりしてきます。
12:17 長い長い坂道が終わり、やっと成就社まで戻ってきました。
今回、山中で1泊させていただき、また暗く寒い中無事登頂と撮影ができたので、成就社にお礼のお参りをしていくことにしました。
12:43 だらだらとした下りの坂道ですっかり足が痛くなってしまいましたが。ようやくロープウェイ駅に着きました。今度は雪がなくなった時期に、星景写真狙いで訪れたいと思います。
■山行データ
<1日目往路所要時間> 1時間52分(休憩時間を含む)
山頂成就駅15:32→成就社16:01→八丁16:21→前社が森17:24
<2日目往路所要時間> 1時間55分(休憩時間を含む)
前社が森4:58→夜明峠5:19→二の鎖下5:55→弥山山頂6:53
<復路所要時間> 2時間58分(休憩時間を含む)
弥山山頂9:45→二の鎖下10:18→前社が森10:55→八丁11:31→成就社12:17→山頂成就駅12:43
<登山道情報>
八丁から上の登りは雪が少ない急斜面なので滑りやすく、八丁でクランポンを装着しておいたほうが無難。前社が森の小屋裏トイレは使用可能。二の鎖下から山頂までは、急斜面や凍結した斜面のトラバースがあるため、ストックでの通過は危険。アックスに持ち替えてから入ること。また、ステップを切りながら登る必要があるところもあるので、前爪のない4本や6本のクランポンの場合は引き返したほうがいい。山頂のトイレは使用可能。
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