ヤマふぉと

山の自然や風景をゆったりと眺め、写真を撮るために山に登る。だから、登頂や縦走を目的とせず、好きな山域でテントを張ったり小屋に連泊して、カメラ片手にのんびりと過ごす。そんなスローな山登りを楽しんでます。

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厳冬期の南アルプスデビュー戦: 仙丈ケ岳その3

2012年12月31日~2013年1月2日 南アルプス仙丈ケ岳


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小仙丈ケ岳山頂で少しの間晴れ間が覗くのを待ち続けたのですが、そんな気配はまったくなく、吹き付ける強風にただ体温をうばれていくだけの数分間でした。手の指先も、足の指先も、時間と共に痛みとも痺れともいえるなんともいえない不快な感触に蝕まれていくのを感じながら、せめて仙丈ケ岳の姿を一瞬でも目に焼き付けて帰りたいという願いもむなしく、ガスは山頂付近にとどまり続けていました。これほど強い風が吹いているのに、なぜ晴れないのか不思議ですが、自然の摂理の前には、小ざかしい人間の願いなど何の役にも立ちません。できることなら、厳冬期の北岳の姿も見たかったのですが、どうやら今後のお楽しみということになりそうです。


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仙丈ケ岳のある南側と北岳などがある東側だけガスで覆われているのに比べて西から北にかけてはわりと視界が利きます。西側は馬の背の尾根が見えています。


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北(正確には北東)には甲斐駒が、舞い上がる雪煙の彼方に白く輝いています。


11:50 いつまでも極寒の山上でじっとしていると、手足の指が凍傷になりかねません。後ろ髪をひかれる思いで、山頂を後にしたのでした。


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あえぎながら登った道は、今度は快適な斜面です。しかし、疲れて脚ももつれ気味です。稜線ではないとはいえ、転倒はなにかと怪我の元です。転ばないように、慎重に斜面をくだります。


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13:15 三合目までもどってきました。かなりバテ気味だったので、荷物を下ろして休憩をとりました。ふと右手をみると、三角形の見事な山容の山が見えます。「あれは・・・北岳か?」 あの姿はおそらく北岳に違いありません。小仙丈ケ岳の山頂からはまったく見えなかった姿が、ここにきてようやく見ることができました。国内第2位の高峰、そして僕が初めてソロテント泊で登った山です。苦しくつらい山行でしたが、山の魅力にすっかり魅せられてしまったのが北岳でした。あそこが僕の山の出発点です。いつか真っ白いあの頂に立てれば最高なのですが、はたしてそんな日が来るのでしょうか。(この写真から、ふたたびFT1の写真になります)


ぬるくなったお湯を飲み、僕は出発しました。二合目まではそれほど時間はかからないはずです。しかし、足取りは重く、体も疲れています。あきらめていた北岳を見れた喜びはすぐにトーンダウンし、早くテントに戻って休みたいという気持ちばかりが心に広がります。いつもなら写真を撮ろうとあちこち見ながら歩くのに、視線は足元にばかり落ち気味です。つらい下山でした。


ふと目を上げると、下のほうに平らな鞍部が見えました。あんな場所あったっけ? と思いながらもコースを目で追っていくと、鞍部の手前に二合目の道標が見えたのです。なんだ、もう二合目まで下りてきたのか。道標までの距離は、せいぜい50mほどのように見えました。鞍部は二合目より下にあったのなら、登りのときに気がつかなかったのは当然だなと思いながら、二合目の道標に向けて歩き出しました。


歩きながら、ふたたび視線は足元に落ちます。下り坂なので、足元に注意するために自然にそうなっていたのでしょうし、疲れていて周囲に気を配る余裕がなかったのもあるでしょう。何も考えないで、ただもくもくと足元を見ながら下っていると、目の前に鞍部がありました。
『あれ? 鞍部まで下りてきてしまった。』
二合目の道標を見落としてしまったのかと思い振り返ってみましたが、どこにも道標がありません。思ったより鞍部から上にあったのかと思い、仕方がないので坂道を引き返しました。疲れた体にはこたえる登り返しです。少し登って見通しのきく場所になったのですが、どこにも二合目の道標はありません。


『おかしいなぁ。さっき確かに二合目の道標を見たのに、なんでないんだ? 上から見たときは鞍部の手前に見えたんだから、ここらあたりのはず。なのに、なんでないんだ? もしかしてまだ上なのか。』
しかし、そんなはずはありません。登り返してきたこの場所から見る鞍部は、さっき二合目の道標が見えたときの鞍部と、距離的にそれほど違っているようには見えないから、まだずっと上というわけはないのです。目を凝らして上のほうを見ても、それらしい道標はまったく見当たりません。少し登り返してみたものの、もうこれ以上戻る気にはなりません。


こんなときすべきことは、GPSで標高や緯度経度を確認し、地図と照らし合わせて現在地を確認すればいいのです。至極簡単なことなのですが、疲れているとなぜかそういうことがめんどくさくなってしまうのが問題です。GPSはショルダーベルトにぶら下げているし、地図はジャケットのポケットに入っているのだから、バックパックを下ろす必要もないので、立ったまますぐに確認できるはずです。しかし、このとき地図がどこにあるのか、GPSがどこにあるのか、なんとなくわかっているようでわかっていない、おかしな感覚になっていました。低血糖で頭がぼけていたのかもしれません。戻ろうかと思いながら、足は動きません。そうかといってさっさと下るという決断もなかなかつきません。しかし、結局のところ、地図がどこにあるのかいまいちよくわからないし、探すのも面倒なので、このまま下ってしまおうと思ってしまったのでした。


幸いトレースはしっかりしており、このままこのトレースを下れば北沢峠に出るということはわかっていました。二合目からの近道を使うよりも少し遠回りになりますが、登り返しがあるわけでもないのでまあいいかという感じです。今考えると、まるで遭難者の思考パターンです。道がわからず山中を歩き回って疲弊してしまい、登り返す気力も体力もなくしてしまった結果、とにかく下ればどこかに出られるはずだと考えてしまう思考パターンに近いものがあります。疲れて血糖値の下がった状態の脳は、危険を判断する能力さえなくしてしまうのかもしれません。そして、自分に都合のいい判断を下してしまうようです。もっと怖いのが、自分が欲しているものを見たり聞いたりするということ。遭難者の手記を見ると、救助隊や他の登山者などの幻覚や幻聴を見聞きしています。僕が見た二合目の道標は、早く二合目に着きたいという思いが見せた幻覚だったのかもしれません。


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13:40 二合目は通り過ぎてしまったものと思い込んで、歩いた記憶のない鞍部を越えて軽く登り返し、再び下り始めたとき、前方に再び二合目の道標を見つけました。しかし、それは消えてなくなることなく、実体となって目の前に存在していました。本物の二合目の道標だったのです。であれば、さっき見た道標はなんだったのか。なにか釈然としない気持ちながらも、来た道を通って帰れることにほっとしたのでした。


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14:10 二合目から南アルプス林道まではわずか30分しかかかりませんでしたが、相当長い道のりに感じました。写真を撮ることすらすっかり忘れていました。テープに番号が書いてあり、はじめのうちはそれを数えながら歩きましたが、数えても数えてもなかなか減らない数字に嫌気がさし、すぐに数字を見ないようにして下りたのでした。無事に戻ってきた安堵感が頭を正気にさせたのか、ここにきてやっと写真を撮ることを思い出しました。無事下山できたことを祝して、場違いながら、万歳! 


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その夜はきれいな星空が頭上に広がりました。せっかくなのでテント場の星空を撮影してみました。





1月2日の朝、目が覚めて外を見ると雪が降っていました。視界はあまりありません。天気が良かったら甲斐駒ヶ岳に登ってみようかと思っていましたが、この天気では中止です。残念というよりもどちらかといえば下山するための大義名分ができたことで安心したというほうが正直なところです。


何も急ぐ必要がないので、ゆっくりと朝食をとり、テントの撤収にかかりましたが、雪が凍結していて竹ペグを掘り出すのにけっこう苦労しました。



ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。




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9:02 雪の舞う中でテントを無理やりバックパックに押し込んで撤収完了です。帰り際に記念に撮った写真ですが、中央の半分雪をかぶったテントは、31日からずっと雪をかぶった状態でした。もしかしたら甲斐駒で行方不明になっているらしい大阪の男性のテントだったのかもしれません。


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9:28 北沢峠の下山口に着きました。雪は小降りになったもののまだ降り続いていました。


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さあ、ここから丹渓山荘まで長い下り道です。途中、ビバークしたのか、テントを張った跡が3箇所ほどありました。出発が遅かったり、途中でばてたりすると日のあるうちにテント場までたどり着けない人もいるのでしょう。


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丹渓山荘直上の急斜面を慎重に下ります。


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11:44 丹渓山荘下で大休止です。仙丈ケ岳への行動食で食べるはずだった、かちかちに硬くなったスニッカーズを食べてみました。最初こそ硬いものの、口に入れるとすぐに柔らかくなったので、冬場でも行動食としては使えそうです。


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11:58 どんよりとした空の下、再び長い河原歩きです。


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途中、鹿の頭蓋骨が下山方向をにらんでいました。


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14:46 最後の堰堤を越えました。ここから駐車場が見えるかと思っていたら、山陰に隠れて見えません。見えないとなると、どこにあるのかわからないので、まだまだずっと先にあるように感じてしまい、気持ちが落ち込みます。


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14:59 やっと駐車場に戻ってきました。長かった・・・ そして疲れました・・・ 


帰りは戸台口にある仙流荘で温泉につかり、伊那市内で食事をしてから中央高速道にのりました。たぶん途中で眠くなるからどこかのPAで仮眠して帰るつもりでしたが、なぜか全然眠くならなくて、仮眠もとらずに運転し続けて、午前2時に家に帰り着いたのでした。


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■山行データ
<戸台~北沢駒仙小屋テント場間往路所要時間> 7時間51分(休憩時間を含む)
駐車場7:50→丹渓山荘11:44→テント場15:41

<テント場~小仙丈ヶ岳往路所要時間> 4時間32分(休憩時間を含む)
テント場7:08→二合目8:03→大滝頭9:59→小仙丈ヶ岳11:40

<小仙丈ヶ岳~テント場復路所要時間> 2時間29分(休憩時間を含む)
小仙丈ヶ岳11:50→大滝頭12:26→二合目13:42→テント場14:19

<復路所要時間> 5時間57分(休憩時間を含む)
テント場9:02→丹渓山荘11:44→駐車場14:59



<登山道情報>
雪はそれなりにありましたが、トレースはしっかりしており、足が潜ることもなくラッセルが必要なところもありませんでした。ワカンはまったく使いませんでしたが、やはりこの時期山に入るのであればいちおう装備しておいたほうがいいと思います。

テント場はそれほど混雑していませんでした。テント泊の受付時に、水はテント場の隣を流れる小川の水を沸かして使用してくれといわれました。上流に仙水小屋があるのでどうかという気もしますが、まあ排水を垂れ流しているわけではないでしょうから、気にしなくてもいいのでしょう。汚れているのなら北沢駒仙小屋でも使うなというでしょうし。

北沢駒仙小屋の隣にトイレがあり、使用可能です。ただし、男女共用で、手洗いの水場は凍結して使用できません。テント場の横を流れる小川まで洗いに行くか、ウェットティッシュなどを用意しておく必要があります。トイレ自体は思ったよりはきれいでした。寒いのでにおいもありません。ペーパーもあります。

北沢駒仙小屋は年末年始は営業していますが、宿泊するのであれば事前の予約はとったほうがよさそうです。



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| 2013年1月 仙丈ケ岳 | 12:49 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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厳冬期の南アルプスデビュー戦: 仙丈ケ岳その2

2012年12月31日~2013年1月2日 南アルプス仙丈ケ岳


午後7時過ぎには寝袋にもぐりこんだものの、しばらくは寒さ、疲れ、筋肉痛でなかなか寝付かれず、なんとなくうとうとしているような状態でした。


午前0時を回った頃、体中の筋肉が硬直するような不快感に襲われ、無性にストレッチがしたくなりました。そういえば、テント場についてからストレッチなどは何もしていません。寝袋から這い出して、首やら肩やらを回してみたり、足や背中の筋を伸ばしたりと、狭いテントの中でできる限りのストレッチを行うと、なんとか体の不快感は治まりました。


そうなると、今度は空腹感がじわじわと沸き起こってきます。そういえば、お餅を4つ持ってきていたはず。お正月でもあるしインスタント味噌汁に入れてお雑煮代わりに食べるか、ということで作った簡易お雑煮のうまかったこと。テントの中にいるとおよそお正月を想像させるものなどありませんが、わずか2個のお餅だけでなぜかお正月気分になれたのでした。


空腹感もみたされ、体が温まり、筋肉痛はあるものの体の不快感も低下し、これで早起きして仙丈ケ岳からご来光が見られれば最高の年になりそうだと思い、アラームを3時にセットして寝袋にもぐりこみました。


すっかり寝入ってしまったらしく、ふと気がつくとまだあたりは真っ暗です。まだ時計のアラームがなっていないので、3時前ということでしょうか。寝袋から手を出して枕もとのヘッドライトと腕時計を手探りで探し当て時刻を確認したところ、わが目を疑いました。「4:37」! 3時にセットしたアラームは、ひとりむなしく鳴り響いていたらしいのですが、一定時間鳴り響いて自動的に止まったわけです。冬用寝袋に頭からすっぽり包まって寝入ってしまった僕には、時計のアラーム音は意識を揺り起こすほど響いてこなかったのです。今から大急ぎで準備して5時に出発できたとしても、日の出時間までには森林限界の高さにすら届いていないことは明らかです。(落ち着いて考えれば、3時に起きて4時に出発したとしても日の出時間に登頂というのはしょせん無理なんですけどね。森林限界に出られればOKというレベルの話です。)


もはやこれまで。ご来光はすっぱりあきらめて、とりあえずしっかりと朝食をとることにしました。目覚めたときのテント内温度が-10度(腕時計の計測限界が-10度なので、実際はもっと低かったかもしれません)でしたから、外気はそれよりももっと低かったはずです。朝食は、当然ながらいつものラーメンです。今回はちょっと贅沢して焼き豚のブロックを持ってきたので、それをカットして贅沢チャーシューメンの出来上がりです。ハフハフいいながら熱いラーメンを流し込めば、眠っていた体と頭も目を覚まします。しかし、強烈な筋肉痛と体の重さはいかんともしがたい感じです。


食後にお茶を飲み、お湯を沸かしてポットにつめ、カメラなどの必要な機材と、万一のことを考えてダウンジャケットなどの防寒着もバックパックに詰め込みました。気温の低さを考慮し、手袋はジオラインのインナーをウールの薄手インナーに変更。その上にシェトランドウールグローブ、オーバーグローブという組み合わせにし、とりあえずミトンは様子見で着けずに行くことにしました。上半身は、ドライレイヤー、ウール厚手ベースレイヤー、フリース、ソフトシェル、そしてハードシェルまで着込みます。いちおう買う前にぱつんぱつんにならないか確認して購入しているので、これだけ着込んでもとくに窮屈ではありません。ソフトシェル、ハードシェルともにわきの下にベンチレーション用ビットジップがあるので、両方とも半分あけて熱気がこもらないようにしておきます。それでも暑ければハードシェルを脱げばいいだけです。下半身は、寝ていたときのインナー2枚履きの上に直接ハードシェルパンツをはきます。下半身はおそらくこれで大丈夫なはず。


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7:08 靴を履き、クランポンを装着し、アックスを身につけて、いざ出発です。結局なんだかんだで7時を回ってしまい、すっかり太陽が昇ってしまいました。1時間で出発するつもりが、2時間以上経っています。なんでこんなに時間がかかったのか、自分でもよくわかりません。そのせいか、少々あせっていたのかもしれません。このとき、非常に重要なものをテントに置き忘れていることにまったく気がついていませんでした。


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目指すは正面に見える小仙丈ケ岳の白い頂のそのまた奥にある仙丈ケ岳。標高3032.6m。テント場の標高が約2000mですから、1000mの高低差です。過去の自分の雪山での経験では、おおよそ1時間で標高差130mほどのペースです。そのまま当てはめると7.7時間もかかることになります。荷物が軽いということで、多少早くなったとしても、せいぜい7時間まで縮められるかどうかでしょうか。とすると、早くても午後2時に登頂できるかどうかというところです。たとえ登頂できたとしても、はたしてそんな時間から下山して日没までに帰ってこられるでしょうか。考えてもしょうがないので、とにかく出発です。


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北沢峠から仙丈ケ岳へのメインルートは、長衛荘の前から尾根伝いに上がっていく夏道ルート同じです。テント場から行く場合は、林道に出たところから尾根斜面を斜めにトラバースして二合目に合流する近道がついています。踏み跡もついていたので、当然近道から登ります。


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林道の先には、朝日を浴びて赤く染まった山の斜面が見えていて、まだ日陰の暗い森とのコントラストが印象的です。


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ルートはしっかりと踏まれており、踏み外さない限りは深くもぐるようなことはありません。ワカンも担いできていますが、昨日の登山道でも必要なかったので、今日はテントにおいてきました。踏み跡がしっかりしているため、案外さくさくと歩けます。あまり人の歩いていない岡山県北の山に登るより楽チンです。



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やがて、日が差し始めましたが、思ったより気温は上がりません。スタート直後は-8度ぐらいでしたが、いまだに-6度ぐらいです。



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8:03 二合目に着きました。標高はおよそ2170m。1時間で170mなので、なかなかいいペースです。



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しかし、本コースに合流してからが本番です。傾斜が急になり、息が上がります。



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8:49 三合目です。


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振り返ると木々の向こうに稜線が見えていました。あれは鋸岳でしょうか。



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右手方向にもどこかの山が見えていましたが、同定することができませんでした。アサヨ峰あたりのような感じです。


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9:13 四合目です。やや平坦で広くなっていたので、ここで大休止をとりました。GPSによれば、標高はおよそ2400m。1時間で200mにペースアップしていました。この分なら、お昼過ぎには登頂できるかもと、期待に胸が膨らみます。それでは、シャリバテにならないようにしっかりとエネルギー補給をしておこうと思い、バックパックの天蓋のポケットから行動食を取り出そうとして愕然としました。ないっ! 行動食を入れたいつものメッシュケースが入っていないのです!! 昼食もかねた行動食なので、あのケースがなければ何も食べるものがないということです。他も探してみましたが、バックパックの中のどこにも入っていません。落ち着いてよく考えると、準備していたときにやや多めに行動食を持って行こうと中身を追加するために取り出して、そのあといったん他の食料などの脇に置いてから、バックパックに戻し忘れていたのです!

「信じられん・・・」 己の馬鹿さ加減を呪いました。手元にあるのは、カメラケースのポケットに入っていたひとかけらのチョコレートとポットにつめた1リットルに満たないお湯のみ。お湯があるだけましですが、猛烈にカロリーを消費する冬山で、何も食べずにこれからさらに600mを登って帰ってくるなんて、はたしてそんなことが可能なのでしょうか? すでに朝食を食べてから4時間が経過しています。そろそろ空腹感が頭をもたげてきてもおかしくない頃です。撤退か、強行か、気持ちは揺れ動きます。まだ4合目に到達したに過ぎません。しかも、現在空腹でばてているわけでもありません。天候も落ち着いているし、条件としては悪くない。であれば、とにかく行けるところまで行くしかない。ただし、帰りのことを考えて、バテバテになる手前で引き返すこと。そうと決まれば行くしかありません。ひとかけらのチョコレートをお湯と共にゆっくりと味わって、さらに上を目指して出発したのです。



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しだいに雪が深くなり、周囲の木々にもたくさんの雪が積もっている状況になってきました。


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傾斜もさらにきつくなり、時にはつま先をけりこんでステップを切りながら登らないといけない場所も出てきます。


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途中苦しくて立ち止まって休憩しているときに振り返ると、甲斐駒ヶ岳が目の前に大きく見えました。


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突然傾斜がなくなり、平坦な森の中を進むルートになりました。


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9:59 大滝頭という分岐点に到着です。標高はおよそ2520mです。誰もいませんが、ストックやらスノーシューやらがデポしてありました。だいぶん空腹感がましてきて、体もやや重い感じになりつつあったので休憩をとろうかと思ったのですが、西側から吹き上がってくる風がかなり冷たくて、じっとしているとすぐに体が冷えてしまいそうです。とにかくもう少し先に進んで、風の当たらない場所を探すことにしました。


ところで、いつも左のショルダーベルトに取り付けているカメラケースに入れている記録用デジカメFT1ですが、あまりの寒さにバッテリーが瀕死の状態になってしまい、このあとはソフトシェルジャケットの胸ポケットに入れて暖めることにしました。その上、あまりの風の冷たさにハードシェルのジッパーを閉めてしまうことになったので、ここから先の写真は首からぶら下げた一眼レフEOS 6Dの写真になります。EOS 6Dは極寒の強風吹きすさぶ中、4時間も裸で首からぶら下げていたにもかかわらず、電池の残量メモリがひとつも減ることなく、満タン状態のまま持ち帰ったのです。条件が厳しくなればなるほど、一眼レフのタフさが際立ちます。


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大滝頭から上は森林限界に近づいてくるので、登るにつれて木々がまばらになり、一本一本の木々も小さくなっていきます。急傾斜は相変わらず続きますが、よく踏まれているおかげでそれほど登るのに困りません。しかし、何も食べていないことによる疲労感が、確実に足にくるようになってきました。


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振り返ると、甲斐駒と鋸岳が一体となった巨大な山塊がどっしりとした姿を見せていました。


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いつの間にか森はなくなり、まばらに細い低木が生えているだけの世界になりました。森林限界を突破したのです。さえぎるものがなくなった稜線は、風がますます強まります。時折突風がドカーンと右側からぶち当たってくるのですが、そのたびによろめいて倒れそうになるのは完全にシャリバテ状態になりつつある証拠です。


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10:49 雪の中からわずかに頭を出した六合目の道標を見つけました。まだ六合目なのかと思うと、気持ちも萎えます。


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急傾斜を登りつめると、やや緩やかになった稜線の道が続いているのが見えました。あのピークが小仙丈ケ岳なのでしょうか。いや、おそらく偽ピークだろうなと思いながら、強風に逆らいながら一歩ずつ踏みしめるように先を目指して進みます。


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強い風が作り出す自然の造形「風紋(シュカブラ)」です。風が舞い上げる雪つぶてが、サングラスの隙間から顔面を直撃すると猛烈に痛いので、ゴーグルに付け替えて、ハードシェルのジッパーを上まで引っ張り上げ、完全に顔が隠れるようにして進みます。バラクラバはすでに着用しているのですが、これで口を覆ってしまうと呼吸が苦しくて死にそうになるので、口を覆う布をあご下まで引き下げざるを得ません。ハードシェルのジッパーを、口が隠れない程度に下げることで、とりあえず呼吸を確保しつつ、顔を保護するという状態です。厳冬期強風下の山では、バラクラバよりもフェイスマスクのようなタイプのものを使ったほうがいいかもしれないという気がします。


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再び傾斜がきつくなり、空腹と寒さと疲れから一歩進んでは呼吸を整えるという、まるでヒマラヤ登山でもしているかのような状態です。コースに設置された旗ざおを目標にしながら、あの旗まで行ったらやめてもいいと自分に言い聞かせながら登り続けました。そして、何本目かの旗まできたとき、ようやく前方のピークに小さな道標らしきものが立っているのが見えました。あれがおそらく小仙丈ケ岳に違いない。しかし、そこまではまだ登らなければならないのです。もう、ここでやめようか。どうせ仙丈ケ岳本峰まではいけそうにないし、それならどこでやめても同じ。しばらく立ち止まってピークを眺めていましたが、ふと気がついたのです。たいして傾斜が急ではないことに。ピーク直下はそれなりの傾斜ですが、そこまでの傾斜はそうとう緩いのです。これなら、10分程度で着けそうです。


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後ろを振り返ると、歩いてきた真っ白い稜線がずっと下まで続いています。これだけ歩いてきたんだから、もう10分ぐらい登ってもいいだろう。どうせなら、せめて名前のあるピークを踏んで帰ろう。


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11:40 きっちり10分後、僕は小仙丈ケ岳のピークに立ったのです。ガスの向こうにわずかに仙丈ケ岳の姿がうっすらと見えましたが、あっという間に見えなくなりました。


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稜線をたどって戻ってくる登山者が見えました。なんとなくこのままいけそうな気になりますが、突風が吹くたびによろめいて踏み跡から落ちそうになるような状態です。いままでは踏み跡からはずれても深い雪に埋まるだけで済みましたが、今度はせまい稜線です。この先は、うっかりよろめいて足を踏みはずことは許されないのです。


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踏み跡から外れるということは、急斜面に足を踏み出すのと同じこと。もしも大きくバランスを崩して立て直すことができなかったら・・・ 小仙丈ケ岳直下の斜面は、カチカチに凍りついていました。この先そんな斜面で足を踏み外したらどうなるか、考えるまでもありません。

稜線を取り巻くガスは、ほとんど一瞬も晴れ間を見せてくれません。仮にうまく仙丈ケ岳へ登頂できたとしても、空腹と疲労と寒さで疲弊した状態で無事に戻ってこられるでしょうか。疲れは判断力を低下させ、体の動きを鈍らせます。ミスを起こす可能性は、むしろ下山時のほうが高くなるのは常識です。

また、天候が急変した場合、はたして体温を維持することができるのでしょうか。ツェルトはあります。ダウンの上下もあります。しかし、体温を維持するためにはカロリーのあるものを食べなければいけないのに、持っているのはわずか1リットルにも満たないお湯だけ。バーナーはテントに置いてきたので、お湯がなくなれば体を温めるものは何もないのです。この時期の稜線での天候急変は、かなり危険な状況に陥る可能性が高いといえます。事実、悪天候の北アルプスでは同じ日に複数の遭難が発生していました。

天候を読みきる知識も経験もなく、何かあっても生還できるだけの確証になるものがほとんどない現状で、これ以上先に進むことは勝率の低いただのギャンブルかもしれません。敗者となっても愚者となるなかれ。厳冬期の南アルプスデビュー戦は、残念ながら敗退です。南アルプスの女王様は、敗者にはその姿すら見せてくれませんでしたが、いつかまた挑戦したいと思います。


無理はしないということで仙丈ケ岳登頂を断念したわけですが、心のどこかに慎重すぎるのではないかという思いがあったのも事実です。しかし、下山時にちょっとした幻覚のようなもので混乱することになり、自分が思っていた以上に疲労していた可能性が高かったことが明らかになったのです。その意味では、仙丈ケ岳登頂を断念したことは正解だったと言えるのかもしれません。



つづく。



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| 2013年1月 仙丈ケ岳 | 18:53 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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厳冬期の南アルプスデビュー戦: 仙丈ケ岳その1

2012年12月31日~2013年1月2日 南アルプス仙丈ケ岳


こんな日が来ることを誰が予測できたでしょうか。そもそも、かつては積雪期に登山するなんて正気の沙汰ではないと思っていた人間です。それが何をとち狂ったのか、もっとも寒さが厳しい厳冬期に、ソロテント泊で3000m峰に登りに行こうというのですから、かつての自分なら頭おかしいんじゃないの? と一蹴していたことでしょう。


何はともあれ、行くと決めたのです。この日のために、装備もそろえました。厳冬期用の寝袋、クランポン、アックス、グローブ、シェルジャケットとパンツ、大型バックパック、その他こまごましたものまで含めると、軽く20万円近い金額になっているはず。もちろん、一気に買い揃えたわけではなく、かれこれ数年がかりの買い物です。


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GWの立山で予行演習をかねてテント泊し、雄山の縦走もしました。厳冬期の石鎚山や剣山への登山はもちろん、氷点下10度の地元1000m級の山への登山などそれなりの練習はしてきたものの、はたして厳冬期の南アルプスでその経験が通用するのか、こればかりはなんともいえません。とにもかくにも、装備はある。あとは経験のみ。とにかく、やばいと思ったら即撤退。がまんはしない。無理もしない。何かあってもあきらめない。そのことだけを固く心に誓って、戸台の登山口に立ったのでした。


85リットルのバックパックはパンパンに膨れ上がり、肩と腰にずしりとのしかかります。天気予報では、31日と1日は晴れ。しかし、寒波が来ているので寒さは厳しいとのこと。登山天気では、標高3000m付近は-14度などという数字も出ており、その上風速20m/秒! まともに立って歩けるのか?という疑問以前に、体感温度は-34度ってことか? はたしてこの装備で大丈夫なのかという疑問が心の片隅にどよ~んと淀んでいるのを感じながら、僕は歩き出しました。


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7:50 自宅で作ってきた登山届けを提出し、登山口の標識から一歩踏み出してみれば、そこはまさに荒野。はるか彼方の峰を目指して、長大な河原歩きが始まります。北沢駒仙小屋までは、夏道のコースタイムで5時間30分程度。雪道ということを考えて1時間余分を見たとしても、15時前には着けると考えていました。しかし、自分の体力低下分をあまり考慮していなかったこの時間配分は、結果的に失敗でした。


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谷の奥はるかに見えているのは、おそらく甲斐駒ヶ岳とその周辺の峰々だと思いますが、肝心の甲斐駒は雲隠れのご様子。


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最初の堰堤までは工事用の道路のような土手道上を歩くので、これといって苦労はありません。


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最初の堰堤を越えると、ここからはいよいよ本当の荒野の始まりです。もはや作られた道はありません。


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広い荒野のような河原歩きのあとで、今度は渡渉点が現れました。けっこうな川幅ですが、水が少なく水深が浅いので、石を伝ってわたることができました。


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渡渉点から少し先の右岸上に、廃屋がぽつんとたたずんでいます。かつては山小屋だったのでしょうか。しかし、ずっと奥にある丹渓山荘以外に地図には何も載っていません。


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だいぶん川幅が狭くなってきました。


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再び渡渉点です。


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このあたりは、川幅が狭く、流れがいくつもに分かれているので、小さな渡渉を何度か繰り返します。


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ますます川幅が狭まってきた頃に、堤防が見えてきました。白岩堤防というやつのようです。


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白岩堤防の手前は、ルートが右岸斜面上を巻いていくので、滑って落ちたら大変です。入山時はまだ雪が固まっていなかったので、それほどでもありませんでしたが、下山時はかちかちに凍りついていて大変でした。


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9:08 白岩堤防に到着です。


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白岩堤防の先には、別の堤防(白岩第二堤防というらしい)も見えています。戸台からはるか彼方に見えていた山も、少し大きく見えるようになってきました。


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白岩第二堤防へは長い凍結した階段を登ります。ここも、つるつるで大変です。


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白岩第二堤防を越えると、再びだだっ広い河原歩きです。ここをまっすぐ突っ切って、今度は左岸へとルートが変わります。


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15分ほどで、別の堰堤が現れました。ここは、左岸側(向かって右側)を越えていきます。


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右岸の山が少し後退して、景色が雄大に見えるようになってきました。おそらく鋸岳の方向が見えているのだと思われます。


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このあたりから凍結路面が増え始め、多少のアップダウンも出てきたので、今回のために用意してきた簡易滑り止め「スーパースノーアイスパッド(870円)」を使ってみることにしました。クランポンをつければいいのですが、割と平坦な道で石があるような道だとかえって歩きにくのです。3月の上高地に行ったときに凍結した林道歩きに難儀したので、平坦な雪道を歩くような場合は簡単な靴用滑り止めを使ってみようと思ったのです。


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類似のものには、靴底全体で履くタイプもありますが、少しでも軽く小さいものということでこの商品にしたわけです。装着は簡単で、マジックテープで靴に巻きつけるだけ。これだけでも、凍結路面には十分効果がありました。た・だ・し、しばらく歩いているとすぐに外れてしまいます。なので、結局ほとんど役に立ちませんでした。どうせ買うなら靴底全体に装着するタイプのほうがよさそうです。しかし、あれもけっこう重いしかさばるので、軽量化を考えればあきらめて早めにクランポンを装着したほうがよさそうです。


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10:35 河原歩きのルートが、途中から左岸の林の中へと入っていきます。いよいよ丹渓山荘も近いのかと期待しましたが、まだまだでした。


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森の中をひたすら歩きます。時折、森全体を揺さぶるような強い風がゴォーっと吹き抜けて行きます。このときは、ウール厚手のアンダーウェアの上に直接ソフトシェルを着ただけの服装でしたが、歩いている分にはちょうどいいものの、風が吹いた瞬間は一気に冷気が体にしみこんできます。冬場のウェアリングは難しいです。


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鋸岳熊穴沢ルートの分岐です。地図のコースタイムではここから丹渓山荘まで20分です。長い河原歩きももうすぐ終わりです。


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迷路のような森の中を、踏み跡とテープナビを頼りに進みます。


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突然現れた丸木橋。表面には凍結した雪が張り付いています。何もつけていない靴底でこれを渡るのは、なかなか大変です。落ちてもおぼれるような沢ではありませんが、氷点下の気温でびしょ濡れになるのはなんとしても避けたいものです。


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11:44 左手の崖の上に丹渓山荘が見えてきました。4時間近くもかかった河原歩きがようやく終わりました。コースタイム3時間のところを、すでに50分もオーバーしています。この時点で、当初考えていた1時間の余裕をすでに使い果たしてしまったわけです。この先、本格的な登りになる区間なのに、はたしてどれぐらいのペースで登れるのか、日が暮れる前にテント場にたどり着けるのか、心配の種は尽きません。


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丹渓山荘の下には、テントが二張り。こんな時間にこんなところにテントを張っているということは、どこか近くの岩場を登りに来たのでしょうか。


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ここで休憩をかねて、クランポンを装着します。いままでは、グリベルの10本爪G10ワイドを使っていましたが、南アルプスデビューということで、12本爪のグリベルエアーテックニューマチックを購入しました。実際問題、10本と12本で大差ないのですが、急斜面のトラバース時はやはり爪が2本余計にあるほうが心強いということで、今回デビューとなりました。セミワンタッチというのもポイントです。爪の長いG12にしなかったのは、岩の露出しているような場所では爪の短いエアーテックのほうが歩きやすく、爪を引掛ける心配も低いという理由です。南アルプスは北アルプスと違って豪雪地帯ではないので、この時期はまだ積雪がそれほど多くなく、岩が出ている場所が多そうだというわけです。


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12:00 クランポンを装着し、ポットの熱い
お湯でカロリーメイトとチョコレートを流し込んで、北沢峠までの長い急登に挑みます。


ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。



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崖の上に登ってみると、緩やかにゆがんだ丹渓山荘の廃屋が静かにたたずんでいました。南アルプス林道が開通するまでは戸台から甲斐駒や仙丈ケ岳への登山道の要としてにぎわったのでしょうが、夏の登山客を南アルプス林道のバスに奪われ、冬期のわずかな登山客だけでは営業が成り立つわけもなく、息絶えるように閉められた山小屋です。今、ここを通過してみて思うのは、せめて避難小屋として冬期に開放してくれれば、案外助かるのにという思いです。


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小屋のすぐ脇から始まる急登をこなしたら、少しの間沢沿いの斜面をトラバースします。その先で沢に突き当たったところで沢を越えて、いよいよ八丁坂が始まります。


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ジグザグの急勾配を登りきったところにちょっとした休憩スペースのような場所があり、重い荷物を下ろして休憩することができました。写真を撮ろうかという余裕もでます。


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この場所からは、向かいの山腹を走る南アルプス林道が見えました。あの道の高さまで登れば北沢峠があるというわけですから、こうしてみるとそれほど標高差があるわけではないようです。もっとも、あちらの道もまだ左手に向かって登っていくわけですから、実際の標高差は見た目以上あるのも事実です。少なくとも、今見えているあの山の上まで行く必要はないというだけでも気持ちは楽になります。丹渓山荘から後になり先になりしながら歩いてきた赤いジャケットのソロ男性が追いついてきたので少し話をしたところ、林道を何度か越えたところで山小屋が一軒あり、そこからさらにもうひと登りしたところが北沢峠だとか。う~ん、それほど甘くはなさそうです。


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休憩した場所からは、しばらくわりと平坦な森の道が続きます。大きな洞が口をあけている巨木もあり、静かな針葉樹の森が広がっています。ところで、このあたりから指先の痺れがひどくなってきました。痺れというより痛みに近いものがあります。おそらく標高が上がったことで気温が下がったのが原因なのでしょう。このときは、モンベル ジオラインインナーグラブ、ブリッジデイル Bdメリノグラブ(中厚)、イスカ ウェザーテック ライトオーバーグローブの3レイヤーでしたが、さすがに氷点下になるときついものがあります。


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13:59 最初の林道との合流地点です。当初、これが南アルプス林道だと思っていたのですが。地図で見るとこんなところで南アルプス林道と合流するようになっていません。どうやら、支線のひとつのようです。


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14:06 二つ目の林道合流地点です。林道がちょうどカーブしているところで合流しているので、ここから50mほど林道を歩きます。


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「八丁坂仙水峠線」の道標から、再び林道と分かれて森に入っていきます。


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14:16 三つ目の林道合流地点です。ここで指先の痛みが我慢できなくなり、Bdメリノグラブをイスカ シェトランドウールグローブに取替え、なおかつオーバーミトンもはめました。オーバーミトンは念のためですが、さすがに指がパンパンでストックをしっかりと握れなくなってしまいました。それでも凍傷になったら困るので、背に腹はかえられません。


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14:52 長い森の中の坂道にいい加減うんざりしてきた頃、ようやく坂の上に小屋が見えてきました。


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小屋からさらにもうひと登りあるという話をすっかり忘れて、北沢峠に着いたんだ!と大喜びで小屋の前まで登っていったところ、林道はさらに左手に向かってずっと上り坂になっています。


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休憩を終えて出発した先行の登山者が、そこからまた森の中へと入っていくではありませんか。少しの間意味がわからず立ち尽くしていたのですが、ようやくここからもうひと登りの話を思い出して、背中の荷物がますます重くなったように感じました。


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大きな雪の塊に座り込んで、脱力したようにぼんやりと目の前の風景を見ていましたが、このまま座っていてもゴールはぜんぜん近づいてこないということを思い出し、最後の登りへと向かったのでした。それにしても、この最後の坂がなんとつらく厳しいことか。おそらく、多くの人がここが北沢峠だと喜び勇んで林道に出てきて、きっと失望で体中の力が抜ける虚脱感を味わったことでしょう。


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15:18 急勾配の山道を何度も切りかえし、あそこまで行ったら絶対休憩してやると思いながらたどり着いた場所には、平坦な道路がありました。右を見ても左を見ても、上り坂はありません。やっと、本日の最高地点にたどり着いたのです。もう、これ以上は1cmたりとも登らなくていいのです。


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ほぼ平坦な林道をだらだらと下っていきます。


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下った先には北沢峠の看板がありました。


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看板の背後には、こじゃれた洋館風の山小屋「長衛荘」があります。年末年始だけ営業しているようです。今度来るときは、ここに厄介になりたいものです。


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このときの気温、-6度。寒いです。


北沢峠で旅も終わりかと思いきや、まだ先があるのです。ここからさらに200mほど下って、そこからさらに5分ほど行った先が目指すテント場です。このルートは、どこまでも登山者の体力と気力を試す意地の悪いルートです。


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15:41 やっと、やっと目指すテント場が見えました。これで本当にもう歩かなくてもいいのです。目論見よりもほぼ1時間20分も余計にかかってしまいました。河原歩きで50分オーバーですから、そこからの登りで30分さらに費やしてしまったというわけです。もっとも、あのきつい登りで30分しかオーバーしなかったのなら、まだましなほうかもしれません。


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マイホームの建設地は、登山道からすぐの場所に決めました。トイレにいくのも近くて便利です。雪の硬い部分と柔らかい部分があったので、硬いところだけにテントが納まるように整地して、設営に取り掛かりました。ところが、時々風が吹いてい来るもので、ペグダウンするために雪を掘っているとテントが飛ばされそうになったりで、簡単にはいきません。かじかむ指で細かい作業もうまくいかず、紐を結ぶのに何度もやり直したりと、とにかく無雪期のテント設営の倍ぐらいの時間をかけて、ようやくテントが張りあがりました。もっと設営の簡単なテントがほしいとつくづく思ったのでした。


夕食後、寒いしすることもないので、すぐに寝袋にもぐりこみました。まったく季節はずれの6月に62%オフで購入したプロモンテ エクストリームライトシュラフ(-25度対応)の寝心地はいかに!? 快適は快適です。しかし、やっぱり寒い。参考までに服装はというと、

<上半身>
TNF NT30153 PARAMOUNT TANK(ポリプロピレン製メッシュベスト)
モンベル スーパーメリノウールエクスペディション(山行直前にビビッて購入)
モンベル シャミースインナージャケット(これも山行直前にビビッて購入)
モンベル ULダウンジャケット

<下半身>
モンベル ジオラインLWタイツ
イズミヤ グッドヒートタイツ厚手
モンベル ULダウンパンツ

<足>
モンベル 五本指ウールインナーソックス
アンゴラウサギの毛の厚手ソックス(スキー用ノンブランド)
イスカ ダウンプラステントシューズロング

てな具合です。こうしてみるとモンベル製品が多いです。会員になっておいたほうがよかったかなあ・・・

で、寒いといっても下半身はそうでもなく、足と上半身が問題です。寒さ慣れしていない初日であり、疲労困憊で体力が落ちていると寒さを感じやすいので、そのせいなのでしょう。そうはいっても震えて眠れないのも問題です。


そこで、一番問題である足の冷たさを解消するために、テントシューズの中にホッカイロを貼り付けたら、これが大成功! 足がぬくぬくしてくると、寒さも和らぎます。顔の開口部を思いっきり絞って口だけ出しているようなミイラ状態でも、まだ首周りや肩周りが寒いのには、いつも持ってきているシルクトラベルライナーという絹のインナーシーツで首から肩を包むように巻いてやると、これも効果覿面! やっと、眠りへと落ちていったのでした。


つづく。





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| 2013年1月 仙丈ケ岳 | 12:12 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

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