立山室堂東奔西走: 立山その3 『天候急変にアセる』
4月30日の朝は、4時30分に起きました。昨夜、オヤジ達に眠りを邪魔された割には案外すっきりと目が覚めたのが不思議です。まだ暗いので天気はいまいちはっきりしませんが、雰囲気的には曇り空のようです。

朝からサラミソーセージと乾燥わかめを入れたこってりとしたマルタイとんこつラーメンを食べて、パワーアップです。

テントの外に出てみると、空はどんよりとした曇り空です。昨日と同じようにテント場の近くから雷鳥の鳴き声が聞こえていたので、ひとまずカメラを持って雷鳥の撮影に出かけました。

昨日と同じ個体かどうかわかりませんが、オス鳥が一羽木の枝をついばんでいました。朝の食事なのでしょうか。

雷鳥だけでなく、名前はわかりませんが、かわいらしい声でさえずる小鳥もすぐ近くできれいな声を聞かせてくれました。立山の野鳥は、あまり人を警戒しないのかもしれません。
(クリックで拡大)

7:25 出発の準備が整いました。今日の予定は、テント場からすぐ目の前にある大走りの尾根を真砂岳の南隣にある2860mピークにむけて登り、富士ノ折立・大汝山・雄山を縦走して一ノ越に下りるルートを行くことにしました。もともとは、雷鳥沢を登って別山を経由する縦走路を行くつもりでしたが、天気が芳しくないのであまり長いルートだと荒れたときに面倒だと思い、別山ははずすことにしたわけです。

テント場のすぐ前に見える大走りの尾根ですが、近くに見えても案外遠く、尾根下の取り付きまで30分もかかりました。

夏道はもう少しおくまで登ってから尾根に取り付くようですが、そこはどこでも歩ける雪道です。手前の急斜面にトレースがついていたので、そこを直登することにしました。

20分ほどかかって、テラス状のところまで登りました。テント場がいつの間にか遠く小さくなっています。

先行するボーダーの後を追って、きつい急斜面をジグザグに登ります。ボードの滑った跡がちょうどいい感じでジグザグになっていたので、その上をたどって上がっていくと踏み抜くこともなく楽チンでした。

9:49 ようやく稜線の登山道に着きました。このあたりは雪がなく、風も穏やかだったので、石に腰掛けて休憩をとります。

右手には、これから進む富士ノ折立とその急斜面が見えています。

富士ノ折立手前の鞍部で、雷鳥に遇いました。こんな3000mに近い高さの稜線にまで登ってこなくても、もっと下のほうが生きるのが楽だろうにと思うのですが、雷鳥にも雷鳥の事情があるのでしょう。

富士ノ折立への登りは、岩と雪に加えて氷も混じっており、なかなか厄介です。しかも登れば登るほど氷が増えてきて、ますますやばい状況になってきました。下りでなくてよかったという感じです。

そういう状況のときに限って天候は急変するものです。突然ばらばらとアラレが落ちてきました。あわててハードシェルを着込みました。昨年と違って、今年はレインウェアを持ってきていません。上も下もハードシェルでレインウェアをかねてみようということで、荷物を軽減したのでした。コロンビアのジャケットは、どこまでレインウェアの代わりになるのかやや心もとないところですが、少なくともメーカーが防水をうたっているオムニテック素材である以上、簡単に浸水することはないはずです。パンツのほうはゴアテックスなので心配無用です。

アラレの降り続く中、岩と雪と氷の斜面を慎重に這い登り、ようやく富士ノ折立ピーク直下に着きました。

振り返るといつの間にか視界がかなり悪くなっています。剣岳の姿はまったく見えません。

富士ノ折立のピークは背後にあるこの岩塔ですが、とりあえずちょっと休憩してから登るかどうか考えることにしました。ところが、荷物を降ろして行動食を食べていると、突然あたりが真っ白になり、なんと吹雪のような状況に! 3000mの稜線で吹雪に襲われて視界がきかなくなった瞬間の、背筋が凍りつくような恐怖!! これから進む予定のルートは、黒部側では雪庇の崩落、富山側では滑落の危険が高いといわれる稜線の道です。こんな状況ではとても先へ進むことはできません。状況が悪化する前にさっさと引き返したほうがよさそうです。

休憩を切り上げて出発の準備していると、幸運にも吹雪はすっとおさまりました。視界も一気に広がります。あの吹雪はなんだったの? という感じです。空の様子を注意深く観察してみましたが、どうやら後立山連峰のほうから流れてきた雪雲の塊がたまたま通過しただけだったようです。後に続くような雲は見られないし、雲の流れの状況もどうやら急変する雰囲気はなさそうです。であれば、さっさと出発して早いとこ雄山までたどり着けば、その先は昨年歩いた道ですし、下るだけなのでたとえ吹雪かれてもなんとかなるはずです。

というわけで、富士ノ折立のピークに立つのは中止して、大急ぎで雄山に向けて出発しました。富士ノ折立から大汝山までは比較的平坦で広い尾根道です。吹雪かれると厄介そうなので、足早に進みます。

ただ、広い尾根だと思っていたのは、巨大な雪庇のせいだったのです。前方に巨大なクラックが出現しました。このクラックは右方向に大きく回りこみながら、遥か前方のほうまで延びています。しかも、融けてつぶれかけたようなクラックではなくて、けっこう新鮮!?

なのに、トレースはこのクラックを越えて雪庇の上をまっすぐに伸びています。どうするか悩みましたが、すでに数人の登山者とすれ違っているので、彼らは雄山方面からこのトレースを歩いてきたはずです。手前から雪庇の様子を観察してみましたが、庇状に張り出した下部が空洞の状態ではないようなので、今日の気温なら簡単に崩落することはないだろうと判断し、恐る恐るクラックを踏み越えて先に進みました。もちろん、クラックを避けてもっと右を歩くという手もありますが、そうすると今度は急斜面のトラバースをすることになり、それはそれで滑落の危険性が高まります。どちらにしても安全とは言い切れないわけで、それならばすでに登山者が通過して問題がない雪庇上のトレースのほうが、まだましだろうというわけです。

上の写真で、右手から岩の手前を左前方まで延びている線が、さっきのクラックの続きなのです。つまり、今歩いているこの場所は、夏道で言えば稜線を黒部側に越えた空中だということのようです。右手の岩が見えているあたりが、本来の稜線なのでしょう。なんとも恐ろしいルートです。

恐ろしいクラックの入った雪庇部分を過ぎて、やっと安心できたところで振り返ると、さっきまで見えなかった剣岳が姿を見せていました。どうやら天候は悪いなりに安定してきたようです。

11:33 大汝山の休憩所が見えました。大汝山の頂上は休憩舎の背後に見える岩のあるところのようです。ところで、小屋の手前、右下のあたりに何か動くものがあると思ってよく見ると、こんなところにも雷鳥がいました。

ここの雷鳥は動きがやたら素早くて、あっという間に歩き去って行きました。雷鳥もそれぞれ性格の違いがあるんでしょう。

11:40 大汝山山頂です。昨年果たせなかった立山の最高峰3015mに、一年越しで立つことができました。

ゴジラの尻尾のような八つ峰を従えた剣岳もかなりくっきり見えています。
ここで一息。ポチッと押して休憩したら続きをどうぞ。


記念写真をタイマーで撮り終えると、休憩はなしですぐに雄山に向けて出発です。大汝山と雄山の間がこのルートでは一番厄介だということなので、天候が安定しているうちに一気に通過してしまうためです。

ところが、歩き出してすぐに再び雷鳥に遭遇しました。今度はつがいです。

針ノ木岳を背景にこれは絵になるということで、つい一眼レフを引っ張り出して撮影のために彼らを追ってしまいました。しかし、彼らの歩く速度が思いのほか速い上に、二羽がわりと離れて歩くので、思ったような写真は撮れませんでした。

深追いするのはやめて、カメラをしまって先を急ぎます。大きな岩の下を回り込んだと思えば、今度は急斜面のトラバースと、いままでと打って変わってスリリングなルートが続きます。

一見、広くてなだらかの尾根に見えますが、左側の多くは雪庇の張り出しのようです。トレースは手前の岩を右に回りこみ、この広い尾根の右の端っこへと続いていました。

進んでいくと、またまた雷鳥とすれ違いです。今度はメスでした。やっぱり天気がよくないときは、雷鳥を目撃するチャンスが多いというのは本当ですね。

その先で、今度はオス。もう、雷鳥だらけです。

さて、ようやく雄山神社までもう一歩のところまで来ました。あとは、あの岩を這い登るだけですが、ここでルート選択を誤ってしまいました。正しいというよりもより登りやすいのは青線のルートだったようですが、僕はトレースにしたがってこの地点を直進してしまったのです。理由は、左へ上がると雪庇に乗ってしまうという意識があったことと、雄山への夏道ルートが頂上の雄山神社ではなく、鳥居の先に出るようになっているので、てっきりそちらのルートが使われているのだろうと思っていたことです。つまり、神社の下の大岩を回りこんで、その先の斜面をトラバースするのだろうと思い込んでいたわけです。ところが、赤線のトレースは、大岩の手前あたりであやふやになり、「おかしいぞ」と思ったのですが、大岩の下を回りこむ部分にはトレースが見えていたので、そのまま進んでいったのです。
しかし、大岩を回り込んだところで、僕は立ち止まらざるを得なくなりました。その先の斜面にはトレースがなかったのです。踏み跡は大岩の付け根の崖の前で消えていました。『これを登れってことか・・・?』 高さは5mぐらいのようですが、ほぼ垂直に見える崖を目の前にして、しばし立ち尽くしたのでした。このとき、いったん戻って別のルートを探せばよかったのでしょうが、まったく手も足も出ないというほど難易度の高い状況には見えなかったため、軽率にもその崖を登ることを選択してしまったのでした。もちろん、トレースがなくてもまっすぐ斜面をトラバースして鳥居の下へ行くという選択肢もありましたが、なぜかそのときはその選択肢は頭に浮かんでこなかったのです。

つかんだ岩が外れないかどうか確かめながら、なおかつクランポンの爪を滑らさないように細心の注意を払いながら、なんとか崖を登りきって下を見下ろすと、もしも滑落したら遥か下まで一直線の状況だったことがよくわかります。予想外の展開に完全にてんぱってしまったようです。まだまだ経験不足だと痛感したのでした。

最後の最後にとんだ試練を与えてもらって、やっと立山縦走のゴールにたどり着きました。まさか、こんなところに飛び出してくることになるとは思っていませんでしたが。

神社の前でしばし放心状態になったあと、われに返って記念撮影です。

眺めも悪くないです。(右から)黒部五郎、笠、水晶が見えています。

さらに左に目を転じると、遥かかなたに槍・穂高の姿もうっすらと見えていました。

風が出てきたので下の建物脇で休憩をとることにしました。鳥居はやっぱり雪の中に埋没していました。

ちなみに、夏道がどういう状況なのか確認してみました。降り口はどうということはない緩斜面ですが・・・

大汝山方面に行くには、けっこうな緊張を強いられるトラバースになるようです。

建物の軒下で休憩していると、小鳥が近寄ってきました。野鳥に警戒されないというのは、なんだかちょっとうれしい気持ちになります。

13:01 休憩を終え、下山にかかる前に一等三角点の表示板にタッチ。

ところどころ砂利の出ている登山道を下ります。

13:35 一ノ越山荘前で、休憩がてらハードシェルを脱ぎました。

身軽になってさくさくと下ります。ところが、テント場まであと少しというところでいきなり雨に降られてしまいました。あわててハードシェルを引っ張り出して着込んだのですが、歩き始めてしばらくすると雨はぱったりとやんでしまいました。まったくわけのわからない天気です。

テント場には15:30ごろ着きました。しばらく休憩してから、温泉に行き、戻ってきてから夕食をとり、その後外に出てみると見事な夕焼けが見られました。
その夜も、隣のオヤジ達は昨晩とかわらない傍若無人ぶりを遺憾なく発揮していたのでした。
つづく。
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| 立山2012年5月 | 02:14 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑



















































































































































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